表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忍術師と魔術師の異世界観光日和  作者: 揚羽常時
ある意味異世界観光
425/512

045 ファミレス


「いらっしゃいませ。何名様ですか?」


「二人です」


 そんな感じで通された。


 ファミレスだ。


 ファミリーレストラン。


 単純に物を食うならこれ以上も無い。


「ここ……なんですか……?」


 リリアはせわしなく瞳孔を泳がせる。


「レストラン。食事処」


「こんな立派な場所が?」


「……………………」


 そうか。


 コレでも立派に映るのか。


 そこら辺は、計算違い。


 たしかにデザイン的には一般大衆向けながら、むしろ一般人を威圧しない様なファミリー向けの建築デザインの趣だけど、そこは論じないとして。


 純粋な建築の常識と技術に異世界との開きがあるわけだ。


「はいコレお品書き」


 メニューを渡す。


「ハンバーグ……って何ですか……?」


「小さな肉を混ぜて一塊にした物」


「ステーキ……は……?」


「大きい肉を焼いた物」


「パスタも……あるんですね……」


「それくらいはね」


「ドリンクバーは……」


「ドリンク飲み放題の権利」


 他に言い様もない。


「凄いですね……」


 然程かな?


「こんな高度な技術を……銅貨五枚レベルで……くださるんですか……? なにか落とし穴を……掘られているのでは……? 警戒して……然るべきです……」


「薄利多売ですから」


 他に述べ様もない。


 不安は分かるけど、此処は日本だ。


 交通の高度化と、システムのデジタル化。


 ついで第一次産業との連携および契約は、ここで高位のコストパフォーマンスを発揮する。


 そんなわけで昼食。


 僕は鳥天定食。


 リリアはハンバーグ定食を頼んだ。


 ドリンクバー付きで。


「どりんくばあ……」


「使い方を教えてあげる」


 コーラやらソーダやらが並ぶ。


 僕は無難にコーヒー。


 リリアはホワイトソーダを選んだ。


「いいんでしょうか……?」


「伝票に乗せられてるから後ろ暗いことはないよ」


 席に戻って、コーヒーを一口。


 不味い。


 ツナデのコーヒーが飲みたくなる。


「おお……」


 ホワイトソーダを飲んで驚愕。


「シュワッて……します……」


 炭酸だしね。


「こんな食事処が……あるんですね……」


「このレベルは一般だよ?」


「そう……なのですか……?」


「高級料理店はもうちょっと敷居が高い」


「ふわぁ……」


 機会があれば、連れて行こう。


「お待たせしました」


 とはウェイトレスさん。


 鳥天定食とハンバーグ定食が届く。


 ジュワーと響く鉄板の音よ。


 ナイフとフォークの使い方は、異世界でも通用している。


「いただき……ます……」


「どうぞ」


 僕も鳥天を食べる。


 安定した味。


 たしかに銅貨に間に合うクオリティではない。


 ま、経済に文句を言っても始まらないけど。


「ハンバーグ……美味しいです……ハンバーグ……」


 どうやら肉にも適応はあるらしい。


 向こうじゃ魚よりメジャーだったしね。


 けれどミンチ肉もなければハンバーグは作れないわけで。


「ある意味社会の勝利か」


 文明限界の天元突破とも言える。


 しばらく食事に夢中になる。


「はふ」


 パンを食べ。


 サラダを食べ。


 スープを飲み。


 ハンバーグを完食。


「これで銀貨に……届きませんか……」


 驚くリリアに苦笑を一つ。


「美味しかった?」


「とても……」


 僕らは食後のドリンクバー。


「本当に……飲み放題……なんですか……?」


「さして興味もないけどね」


 ――便利だから飲んでるだけ。


 僕はそう述べた。


「……こんなサービスが……」


「あるところにはあるものだよ」


 他に言い様もなかったけど。


「じゃデートはどうする?」


「ふえぁやわ……」


 赤面。


 愛らしい愛らしい。


 リリアは小動物を扱うように可愛らしい反応を見せる。


 マジで恋する五秒前……は嘘にしても……その愛らしさの反則の度合いは、天を突き抜け星座へと相成る燦然たる輝きに。


「じゃあ昼食も終わったし続行と言うことで」


「ふえぁやわ……」


 狼狽える乙女の何と可愛いことか。


 ぶっちゃけ世界を狙えるレベル。


「リリアはソレで良い?」


「構いません……」


 その純情さは、あまりに尊い物だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ