044 スーパーマーケット
「ふお……」
「何か?」
「凄い……ですね……」
「そう映るよね」
朝食が終わって、着替えた僕ら。
春用のコーデだ。
一目で美少女とわかるリリア。
高原のお嬢様風。
ワンピースと鍔の広い帽子。
先日買った服だ。
見る人全てが振り返る。
楚々として可憐なリリアだった。
「その……目立ってはいませんか……」
「だね」
「申し訳ありません……」
「リリアは可愛いから」
「えと……」
「髪の色は付属品。ぶっちゃけリリアが注目を集めているのは、それだけ可愛いから。僕なんか美少女の付随するおまけみたいなものだね。いや別に否定的な意味じゃないけども」
「リリアなんか……」
「否定しても客観的事実があるし」
誰もがリリアに一目惚れ。
「あう……」
「そんなわけで、リリアは美少女だ」
「あう……」
謙遜。
卑下。
リリアの得意技だ。
「それにしても可愛いよ」
ギュッと手を握る。
手を繋ぐ。
「あう……」
だからソレは良いって。
そして僕らは近場のスーパーに入る。
ミカン。
リンゴ。
メロン。
まず真っ先に飛び込んできたのは果実だった。
「これらは……?」
「フルーツ。樹の実とも言えるかな?」
嘘は言ってないけど詭弁だ。
刺身。
肉。
麺に御飯。
「あ……これは……」
とリリアが興味を示したのはカップ麺だった。
ズラリと並んでいる。
「こんなにたくさん……」
「買っていく?」
「備蓄は……ありますよね……?」
それなりにね。
実際好評だ。
お湯一つで食事が賄える。
その有用性は万人の認めるところ。
「このカップ麺……ですか……? 乾燥させた麺と……保存の効く汁……お湯を入れるだけで……元の姿を取り戻す……その意味では……凄い料理だと思います……。こんな高度な技術を……ここまで量産出来る……ものなのですか……?」
「実際にあるし」
並ぶカップ麺を指し示す。
「そうです……けど……」
「カップ麺は嫌い?」
「いえ……先述の様に……凄いと……想います……」
「クエ鍋と比べればどっち?」
「クエ鍋……です……」
正直で宜しい。
というかコレでカップ麺を選ばれたら、
「どうしたものか?」
のレベルだ。
また別のフロア。
「野菜がこんなに……」
「珍しい?」
「新鮮な野菜は……向こうの世界では……珍しいですし……」
「運ちゃんに乾杯だ」
「うんちゃん……?」
「トラックの運転手」
「車ですか……」
「実際に見たでしょ?」
「はい……」
自動車は道路を走っている。
なら荷運びも出来ると言うことだ。
「何か買っていく?」
「えと……多分余らせてしまうので……」
それは同感。
ツナデなら、自分で食材を買って、全員分の御飯を用意するだろう。
今までもそうだった。
是からもそうだろう。
「これは何です……?」
とは扉に閉じられた棚。
「冷凍食品。レンジで温めて食う奴」
「ああ……あのレンジで……」
「そ」
「担々麺とか……ありますよ……?」
「美味しかった?」
「刺激的でした……」
それは重畳。
僕としては他に言い様もない。
ちなみにスーパーでもリリアは目立っていた。
利休鼠の髪の色は……やはし目立つだろうし……何より純粋無垢な乙女であるリリアの纏う雰囲気も……確かにプラスに作用もするだろう。
「じゃ、次に行こう」
「どこへ?」
「ファミレス」
僕はニヤッと笑った。




