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忍術師と魔術師の異世界観光日和  作者: 揚羽常時
ある意味異世界観光
422/512

042 夜桜デュオ


 ふと目が覚めた。


 夜中の事。


 夜月の輝きが、静謐に部屋を照らしている。


「ウーニャー……」


 ウーニャーは健やかに眠っていた。


 僕は起きて、キッチンに向かう。


 自室を出て屋敷を歩く。


 ダイニング……食堂に明かりが付いていた。


「お兄様」


 ツナデがいた。


「あら、まぁ」


 奥さん、とでも付きそうな驚きかたの僕。


「眠れないのですか?」


「というより突発的に起きちゃっただけ」


「お茶でも淹れましょうか?」


「自分でやるつもりだったけど……ツナデが淹れてくれるなら、そっちの方が美味しいお茶にありつけそうだね」


「では失礼しまして」


 キッチンに引っ込むツナデ。


 しばし待つ。


 ダイニングからシステムキッチンを動かすツナデを見た。


 サラリと鮮やかに駆使してのける。


「ツナデもいつかお嫁にいくのかぁ。娶る男は幸せだね。こんな家事万能で尽くしてくれる女の子を捕まえられたら」


「何か言いましたかお兄様?」


「可愛いって」


「恐縮です」


 そして茶が入った。


「夜桜でも見ながら茶にしませんか」


「構わないよ」


 緑茶の湯飲みを持って、屋敷の縁側に座る。


 隣にはツナデ。


 夜の桜を眺めながら。


「月が綺麗ですね」


「そうですねー」


「お兄様は意地悪です」


「根性ひん曲がってるだけだよ」


「それが意地悪というのですけど」


 知ってる。


「でも夜桜を楽しむには月が必要だ」


「否定はしませんけども」


 互いに茶を飲む。


「フォトンとのデートは楽しかったですか?」


「それなりにね」


「目立ったでしょう」


「それなりにね」


「ぶっちゃけ異世界のヒロインたちは個性が強烈すぎます」


「……………………」


 ツナデが言うか。


 心底からツッコんだ。


 あくまで心中で。


「お兄様は……それでもそんな彼女らのために居場所を作ろうとしています」


「ダメ?」


「とは言いません」


 湯飲みを傾ける。


 ホ、と吐息。


「お兄様が心底から優しいことは……ツナデが一番よく知っています。恨みも辛みも、自分一人で抱えてしまうお人ですから」


「さほど高尚な存在でもないよ?」


「お兄様ならそう仰るでしょうね」


 分かられちゃってるらしい。


 茶を一口。


 千切れ舞う桜の花よ。


「結果論では正しかったですけど……こうもライバルが多いのもこの際辟易もしますよ……実際の問題として」


「ま、その点は知ったこっちゃないんだけど」


「お兄様は恋を知らないんです」


「言われてみればそうだね」


 特級の美少女軍団。


 普通ならハーレム待った無し。


 けれど僕は紳士だった。


 別に好ましく思っていないわけでもない。


 性欲だって普通にあるし、異性への興味関心……あるいは理想像は捉えている。


 けれど何というか……ツナデにしろフォトンにしろ、あるいは他の女の子にしても、僕のもつ感情よりも燃え尽きるほどヒートな情熱を面に出している。


 その点を鑑みれば、たしかに僕は冷静の類だろう。


「お兄様? 一応聞きますけど童貞ですよね?」


 うーむ。


「否定したいけど出来ないね」


 我ながら経験不足。


「なら良いのですけど」


「なんで童貞は恥で処女は名誉なの?」


「攻めが足りないのか。攻められて鉄壁なのか。その違いでは?」


「説得力あるわぁ」


 まさに。


「お兄様になら捧げますよ?」


「知ってる」


 茶を一口。


「本当にお兄様は……」


 ま。


 これが僕なんで。


 諦めて貰うしかない。


 湯飲みを傾けた。


「お兄様」


「へぇへ」


「今日は一緒に寝ませんか?」


「何もしないならいいけどね」


「添い寝するだけです。何時もの様に……」


「何時もの如く……か」


「ええ」


 ホ、と吐息。


「うん。まぁ。ツナデならね」


「感謝します。お兄様」


 別に貸し借りの問題でも無いんだけど。


 添い寝程度で感謝される僕って……?


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