041 無敵艦隊
「ふいー」
「うにゃー」
僕とウーニャーは風呂に浸かっていた。
フグちりの美味しい事よ。
入浴しても、その感動は洗い流せない。
魚文化万歳。
肉と魚なら僕は魚をとる。
「ウーニャー。ウーニャーにはよくわかんないんだけど。食事ってそんなに楽しいの? なんか生きる上で必要って為ると、不便に感じたりしない?」
「そこはまぁ生物ですので」
「ウーニャーも」
「だね」
第一種永久機関搭載型幼女。
本気で都市一つ滅ぼせる戦力だ。
しかも防御もバッチリ。
地球上ではほぼ無敵だろう。
ドラゴンスケイルがどこまで防ぐかにも寄るけど、場合によっては宇宙ですら通用する可能性も……あるかもしれない。
まず以て食事がいらないと言うことは、エネルギー補填に於いて酸化を必要としない……ということにも相成る。
であれば酸素も必要ない可能性がある。
その上でドラゴンスケイルが高濃度の放射線を選択排除するのなら、ウーニャーは宇宙でも生きられる生物の完成点と呼べるかも知れない価値を持つ。
しかも竜の国で聞くに、少なくとも真竜王は、その玉座を子孫に明け渡すサイクルは五千年に一度……と聞いた。
であれば五千年は寿命の範囲なわけで。
考えるだに目眩がする。
「ウーニャーには消化器官が無いからなぁ」
「排泄器官もね」
「パパは食事楽しい?」
「皆がいるからね」
一人でならまた別の可能性もある。
僕が笑顔でいられるのは偏に女の子たちのおかげだ。
「ウーニャーは?」
「ウーニャーも」
「大好きパパ」
「はいはい」
髪を撫でる。
サラサラだった。
生理現象が起きないので、垢や汚れが付かない。
本来なら風呂に入らなくてもいいんだけど、その辺はやはし女の子なのだろう。
あるいは僕が目当てか。
後者なら光栄だけど。
「ウーニャーは僕のこと好き?」
「大好き!」
「ありがと」
クシャクシャ。
「僕もウーニャーが大好きだよ」
「ウーニャー!」
ほころんでくれ申して。
「にしてもドラゴンね」
場合によっては世界遺産級だ。
即時即決、保護対象。
多分一番物議を醸し出すのが、ウーニャーであるはず。
時点でフィリアとジャンヌ。
一番無難なのがイナフか。
こっちはこっちで遁術をもっているので、少女らしからぬ戦闘力も持ち合わせてはございますけど。
「ある意味でフォトンが一番無害か」
無難ではないけど無害。
遁術には対抗できるけど、遁術そのものは使えない。
魔術も無限復元もなし。
別に戦争する国でもないので構いやしないんだけど、やっぱりヒロイン性の高さは、加点されるだろう。
僕的にはね。
「ウーニャー。パパ難しい顔してる」
「色々とね」
考えることがありまして。
「ウーニャーたち迷惑?」
「だったら連れてきていない」
それは確実。
「でも外出禁止令」
「聞くけど一人で街に出られる?」
「ウーニャー」
交通関連で既に心配させる。
他のこととなると心配も倍化する。
「自販機使えるよ?」
確かに。
「イナフに頼まれれば使って良いから」
「ウーニャー。自動販売機! 二十四時間営業!」
そうなるか。
「ウーニャーは概ね慣れたよね」
「夜の徘徊でね」
虹色は目立つので、夜間徘徊で街に慣れさせている。
自販機もその時の物だ。
昼間も連れては行くけど、どうしても視線は拭えない。
別に干渉されることじゃないけど、やっぱりその点は異分子で。
善し悪しの問題ではないけど、常識に不在する意味でウーニャー……というより異世界ヒロインズが突出しているのだ。
「ウーニャー!」
「はいはい。可愛い可愛い」
ウーニャーの頭を撫でる。
「けどま、屋敷でばかりじゃ息が詰まるしね」
「ウーニャー。外の世界も楽しいよ」
「ウーニャーがそう言うのならよかったよ」
実際、初めてばかりの街並みで、それでも楽しんでくれるのならば、此方の世界に招いた甲斐もあろうぞや……。
「また別の女の子を連れるの?」
「そのつもり」
「ウーニャー」
「嫉妬?」
「するよそりゃ」
乙女心に年齢はないわけだ。
ウーニャーは特に明晰だしね。




