039 服屋巡り
ガラス張りの壁。
天井。
道行く人。
その様々なファッション。
「ふおぉ」
フォトンとしては驚かざるを得ないらしい。
ちなみにちょっと目立っていた。
深緑の髪は珍しい。
地毛だけど。
帽子で隠してはいるも、近付けばバレる。
なおフォトンは愛らしかった。
男の目を引く。
「なんだかな」
ちょっと優越感。
僕の功績ではないけども。
「こっちの世界は凄いですね」
「この程度ならまだ穏便だよ」
パリコレとかに比べれば。
「じゃあ、服とか買っていいんですか?」
「構わない」
僕はハンズアップ。
「ブランド物でも構わないよ。むしろそっちの方が良いかもね。フォトンの髪の色は……ある意味で常識を逸脱しているし」
「しょーがないじゃないですか」
「責めてるつもりはないよ。ただ此方にいるのは日本人が大半で。全員黒髪なんだ。必然フォトンの髪の色は目立つ。それだけで他意はないよ。誓って本当」
「異分子ですか」
「特殊だって事」
もうちょっと言うなら、
「特別かな?」
「選民思想ですね」
「知ってる」
けれど事実だ。
フォトンの緑髪は珍しいけど、フォトンの可愛さは一級品だ。
男なら誰でも鼻の下を伸ばす。
「そういうマサムネ様は?」
「僕は例外」
可愛い女子が周りに多すぎる。
そりゃ胃もたれもする。
「マサムネ様は純情すぎます」
「キープしてるだけだよ」
それも誓って本当。
「悪役ぶるのはらしいですけどね」
「何か?」
「ぃぃぇぇ。何も」
――それで。
とフォトンは言う。
「どんな服が似合うと思いますか?」
「適当に服屋を巡ろうか」
そう相成った。
綺麗。
可愛い。
華美装飾。
服屋ではそんな服が取りそろえてあった。
「これなんてどうでしょう?」
フォトンが手にしたのは薄手のジャケット。
毛糸を等間隔で隙間空けた風を通す仕様だ。
「いいんじゃない」
「一万円もしますね」
「向こうなら銀貨五枚ってところ?」
「服一着に?」
「こっちの金銭感覚は加速するから」
今更言っても始まらぬ。
「じゃあ着替えてきますね」
「ごゆっくり~」
ヒラヒラと手を振る。
中略。
「じゃん」
ジャケットを着たフォトンが現われた。
「おー」
オベーション。
拍手喝采。
「可愛いね」
「えへへ……」
愛らしく赤面するフォトンでした。
帽子を被って何時もの如し。
「えへへ。マサムネ様」
「何か?」
「大好きです」
「僕もだよ」
「本当ですか?」
「さて、どうでしょう?」
ちょっと意地悪な僕でした。
「けどこんな手の込んだジャケットを量産するって」
「こっちの世界では普通だけどね」
「凄いです」
「新しい発見でしょ?」
「はい!」
溌剌とフォトンは笑った。
それだけで僕は嬉しかった。
それから服屋を巡って暇を潰し、気に入った服を買うフォトン。
僕は荷物持ち。
中々これでデートっぽい。
「僕で良いのかな?」
「何か仰いまして?」
なんでもにゃー。
「さて、夕餉は何でしょう?」
「ツナデ次第では?」
「それだよね」
ま、悪いように為らないはずだ。
ツナデが僕の食事に手を抜くことは有り得ないし。
「他のヒロインにも着せてみたいです」
「ソレも良いかもね」
いや、本当に。




