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忍術師と魔術師の異世界観光日和  作者: 揚羽常時
ある意味異世界観光
402/512

022 雑炊


「そんなわけで」


 ツナデが言った。


「今日は雑炊です」


 ヒロインが集まっての夕餉。


 さすがにコレはツナデの領域だ。


 ダシの取り方から米の硬さまで。


 全てを一律に、支配し、管理し、出力するのは……もっと永い研鑽が必要でファイナルアンサー……と相成るのでした。


「美味しそうだね」


 率直な僕の感想。


「嬉しいです!」


 破顔するツナデ。


「本当に美味しかったらもっと嬉しいです」


「美味しいに決まってる」


 ツナデの料理は何より僕を優先する。


「本当にこんな料理が」


 とはフォトン。


「あう……奥が深い……」


 リリアは仰け反っている。


「うーん。デリシャス」


 イナフはいつも通りで。


「ウーニャー」


 ウーニャーは尻尾ペシペシ。


「お姉さんもまだまだね」


 深奥を覗くフィリアに、


「さすがのツナデ様」


 ジャンヌの賞賛。


 それほど雑炊は美味しかった。


「ダシの概念がこちらで初めて」


 は異世界ガールズの基本だ。


 だから料理に関しては、ツナデが二歩も三歩も先を行く。


「うまうま」


 僕はソレを楽しむ。


「美味しいですか? お兄様?」


「とっても」


 嘘のつきようもない。


 完璧な品だ。


「良かったです」


「ていうか」


 とはフォトン。


「向こうより食材が揃ってますよね?」


 まぁね。


 それね。


 雑炊をはふはふ。


「スーパーがありますので」


「スーパーね」


 マーケットの一種。


「キノコや野菜も?」


「そう相成りますね」


 イナフの疑問にツナデが答える。


「お姉さん的には味付けに興味があるんだけど」


「後刻教えますよ」


 そこはそうらしい。


 フィリアの疑問にサラリと返す。


「けれどツナデは万能ですね」


「そうならもうちょっと世渡りも出来るんですけど」


 ジャンヌの言葉は不本意らしい。


「けれど然程難しい工程でもありませんよ? ぶっちゃけダシを取れて、米の扱いさえ心得れば誰にでも出来る料理ですし」


「そのダシと米の扱いが……」


 ご尤も。


 僕も頷く。


「そんなものでしょうか」


 キッチンの使い方を教授している身としては、生徒の吸収率は類を見ない……というレベルではあるらしい。


 まぁ慣れれば都な点はあるけど。


「だからこれくらいは出来るようになってください」


「相承りました」


 ヒロイン一同。


 さほどの物かね?


 少しそう思う。


「鶏肉が」


「椎茸が」


「白菜が」


「大根が」


 美味しいらしい。


 たしかに美味しいけどね。


 それにしてもと言ったところ。


「お兄様は不満ですか?」


「まさか」


 言われるまでもない。


「ツナデの料理は美味しいよ」


 それは客観的な事実だった。


 この世に客観が存在するならば。


「良かったです」


 安堵するようなツナデの声。


「良いお嫁さんになるね」


「お兄様とならば幾らでも!」


「そう言うよね」


 予想の範疇だ。


 それにしても愛が重い。


 いや、まぁ、今に始まった事でも無いけども。


「ツナデなら引く手数多じゃない?」


「お兄様以外には興味持てませんし」


「早計だと思うけどな。僕以外の異性に何も感じないの? それはそれで問題がある気もするんだけど……。なんだかなぁ。ツナデは異性に何を求めてるの?」


「とびっきりの愛を」


「……………………」


 ――僕に何が出来るだろう?


 心底そう思い候ひました。


「だからこそのツナデ」


 そうは言えども。


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