022 雑炊
「そんなわけで」
ツナデが言った。
「今日は雑炊です」
ヒロインが集まっての夕餉。
さすがにコレはツナデの領域だ。
ダシの取り方から米の硬さまで。
全てを一律に、支配し、管理し、出力するのは……もっと永い研鑽が必要でファイナルアンサー……と相成るのでした。
「美味しそうだね」
率直な僕の感想。
「嬉しいです!」
破顔するツナデ。
「本当に美味しかったらもっと嬉しいです」
「美味しいに決まってる」
ツナデの料理は何より僕を優先する。
「本当にこんな料理が」
とはフォトン。
「あう……奥が深い……」
リリアは仰け反っている。
「うーん。デリシャス」
イナフはいつも通りで。
「ウーニャー」
ウーニャーは尻尾ペシペシ。
「お姉さんもまだまだね」
深奥を覗くフィリアに、
「さすがのツナデ様」
ジャンヌの賞賛。
それほど雑炊は美味しかった。
「ダシの概念がこちらで初めて」
は異世界ガールズの基本だ。
だから料理に関しては、ツナデが二歩も三歩も先を行く。
「うまうま」
僕はソレを楽しむ。
「美味しいですか? お兄様?」
「とっても」
嘘のつきようもない。
完璧な品だ。
「良かったです」
「ていうか」
とはフォトン。
「向こうより食材が揃ってますよね?」
まぁね。
それね。
雑炊をはふはふ。
「スーパーがありますので」
「スーパーね」
マーケットの一種。
「キノコや野菜も?」
「そう相成りますね」
イナフの疑問にツナデが答える。
「お姉さん的には味付けに興味があるんだけど」
「後刻教えますよ」
そこはそうらしい。
フィリアの疑問にサラリと返す。
「けれどツナデは万能ですね」
「そうならもうちょっと世渡りも出来るんですけど」
ジャンヌの言葉は不本意らしい。
「けれど然程難しい工程でもありませんよ? ぶっちゃけダシを取れて、米の扱いさえ心得れば誰にでも出来る料理ですし」
「そのダシと米の扱いが……」
ご尤も。
僕も頷く。
「そんなものでしょうか」
キッチンの使い方を教授している身としては、生徒の吸収率は類を見ない……というレベルではあるらしい。
まぁ慣れれば都な点はあるけど。
「だからこれくらいは出来るようになってください」
「相承りました」
ヒロイン一同。
さほどの物かね?
少しそう思う。
「鶏肉が」
「椎茸が」
「白菜が」
「大根が」
美味しいらしい。
たしかに美味しいけどね。
それにしてもと言ったところ。
「お兄様は不満ですか?」
「まさか」
言われるまでもない。
「ツナデの料理は美味しいよ」
それは客観的な事実だった。
この世に客観が存在するならば。
「良かったです」
安堵するようなツナデの声。
「良いお嫁さんになるね」
「お兄様とならば幾らでも!」
「そう言うよね」
予想の範疇だ。
それにしても愛が重い。
いや、まぁ、今に始まった事でも無いけども。
「ツナデなら引く手数多じゃない?」
「お兄様以外には興味持てませんし」
「早計だと思うけどな。僕以外の異性に何も感じないの? それはそれで問題がある気もするんだけど……。なんだかなぁ。ツナデは異性に何を求めてるの?」
「とびっきりの愛を」
「……………………」
――僕に何が出来るだろう?
心底そう思い候ひました。
「だからこそのツナデ」
そうは言えども。




