019 みかか
「お兄様とデートですね」
「そんな側面も有るかな?」
僕とツナデは他のヒロインを置いて、外出していた。
他の連中がどう出るかはわからないけど、自重してくれると助かる。
今日はスマホを買いにいっている。
とりあえず全員分。
「料金プランに関しましては――」
「あの。保護者様は――」
そんな感じ。
保護者は行方不明なので、顔を出せと言われても無理な相談だ。
家督も継いでるし、ツナデが保護者で相違ない。
むしろ他に誰がいる……って感じだけど。
一応一番保護者っぽいのはフィリアだけど。
「では」
と納得して、スマホを全員分用意する。
料金プランは普遍的な奴で。
――ワイファイもあるし、そう大仰なことにもならないかな?
そんな感じでみかかに滞在した。
「なんかラインとか使えますかね?」
「慣れじゃないかな?」
他に処方も無いものだ。
「ネットは……」
「パソコンで慣れて貰ってる」
「でしたね」
ツナデは苦笑を浮かべた。
「その内、外出も認めるべきかな」
「それも追々」
「だね」
金髪碧眼のイナフならまだ外国人で通用するんだけど、フォトンとリリアとフィリアとジャンヌはどうすんべ?
少し考える。
あとウーニャー。
別に遁術の維持は些事だけど、それにしてもカロリーの無駄遣い。
みかかと契約が済むと、
「お兄様? 寄り道しませんか」
「構わないけど」
「喫茶店にでも」
「ここら辺にあったかな?」
本気で知らない僕でした。
「こちらに」
と、少し大通りから逸れた場所。
小道に入って学生道路の途中。
「おやま」
喫茶店が存在した。
店内に入る。
「いらっしゃいませ」
マスターが出迎えてくれた。
お冷やとタオル……それからお品書き。
「ふむ」
と読んで、
「エスプレッソ」
「オリジナルブレンドとミルクレープを」
僕が前者でツナデが後者。
「承りました」
と早速コーヒーを淹れてくれるマスターでした。
「にしてもスマホね」
「あった方が何かと便利でしょう」
何時でも何処でもみかかです。
「僕とツナデの分はあるから、まったく理解が出来ないわけでもないか」
「ですね。むしろコレも文明への適応に関しては良い方向に左右するのでは? ツナデはそう考えますよ」
「向こうの世界でも電話っぽいのはあったし」
「闇魔術ですね」
「そうそ」
苦笑もする。
「今頃トランプで遊んでるのかな」
色々と広めたりもした。
「社会に於いては有益かと」
「かもね」
ちょっと苦笑。
胸ポケットをまさぐる。
「しまった」
「何か?」
「薬効煙を忘れてきた」
「外では吸われない方が宜しいかと」
「合法だよ?」
「警察の危機管理の問題です」
「それもそうか」
タバコと見分けは付かないしね。
「ていうかみかかでよかったのかな?」
「良いんじゃないですか? 殊更こだわるわけではありませんけども。お兄様に於かれまして何か懸念が?」
「別に無いけど、ほら、スマホ関連は市場も広いし」
「それはそうですね」
「なんとなく流れでみかかを選んでないかなって」
「安心安全という意味でのブランド力は確かなモノかと」
「そうだね」
それも一理ある。
「お待たせしました」
注文品が届いた。
コーヒーとケーキだ。
僕はエスプレッソ。
スッと飲む。
旨味を含んだ苦味が心地よく口内に広がる。
「美味しいですね」
「恐縮です」
マスターはやんわり賞賛の言葉を受け取ってくれた。
「お綺麗な恋人ですね」
「やん」
マスターのお世辞にあっさり乗るツナデ。
「妹です」
「ははぁ。良き兄なのですね」
「お兄様は最高の男性です」
そこでブラコンを発揮されても……。