006 武器庫
「拳銃ね」
射撃訓練場。
地下にあるソレだ。
拳銃が保管され、銃撃の訓練が出来る場所。
ちなみに僕は銃を使わない。
基本的にクナイとか近接戦闘を想定している。
忍も時代の変遷で、銃火器を使うようになったけど、遁術の有用性は未だ健在。
なので、肉体として劣る女子のツナデは拳銃に一定の信頼を置いていた。
「イーグルサイト……ですか」
狙撃様拳銃。
そのモデルだ。
銃声が鳴った。
的に当たって穴を穿つ。
心臓と頭部に二発ずつ。
「さすが」
「うーん。ちょっとしっくりきませんね」
さすがにコルトガバメントは古いからね。
「ウーニャー。こっちでは普通の技術?」
「ですね。さすがに日本ではあまり見られませんけど」
銃社会でもないしね。
「ツナデ強い」
「真竜王陛下に言われると複雑な気持ちですけど」
ま、レインボーブレスは戦術兵器だしね。
「ウーニャー?」
御当人自覚無し……と。
「お兄様もどうですか?」
「あまり必要も無いかな」
銃より正確な攻撃も出来るしね。
「むぅ」
何か?
「お兄様は出来すぎです」
「そーかなー?」
その辺は懐疑的。
まず以て生まれが非建設的だ。
「お兄様は恵まれすぎです。殺人の技術然り。諜報の技術然り。何にせよ……そこに異論を挟めないのは、お兄様の怪物性の証明です」
「そこまで」
「そこまでです」
うにゃー。
そうツナデは鳴いた。
タン! タン! タン!
銃声が鳴る。
的に穴が空いた。
「銃弾もタダじゃないんだけど……」
「そこはこれから次第ですね」
「使う機会が来ないのが一番かと」
「無理筋です」
知ってる。
「ウーニャーも撃ってみたら?」
「いいの?」
「構いはしませんよ」
拳銃をツナデはウーニャーに渡す。
「意外と重い」
「ま、銃機構は密度が高いので」
「えーと」
「何か?」
「引き金を引けば銃弾が出るんだよね?」
「ですね」
「大丈夫?」
「ウーニャーのドラゴンブレスよりは余程」
皮肉のつもりはなかったけど、結果的に皮肉になった。
「ウーニャー」
タン! タン! タン!
銃声が鳴る。
反動で転げるウーニャーだった。
「やっぱり素人には無理ですか」
分かっていたことでしょうに。
的には当たっていない。
「ウーニャー……」
「難しいでしょ?」
「うん。ツナデは化け物だね」
「不本意です」
「実際にその側面は有るよ。僕から見ても、ツナデの拳銃の使い方は、どこか常軌を逸しているといって過言じゃない」
「過言です!」
そこの摺り合わせは後日として。
「なんでこんな物騒なの?」
ウーニャーの疑問。
「ま、職業柄ですね」
うん。
まぁ。
否定の余地もない。
「ウーニャー!」
ドラゴンに戻って、僕の頭上へ。
「何とはなれば、ウーニャーのドラゴンブレスで一掃するよ?」
「ソレが出来れば万々歳ですけどね」
ぶっちゃけ社会問題だろう。
言ってしまえば異世界からこっちに来たヒロインたちが社会問題なんだけど。
ガチで何と説明するんだ?
「お兄様は高認試験を受けること」
「大学なら一緒に行こうよ」
ただでさえツナデは成績優秀だ。
「仕事がありますので」
「僕が肩代わりするよ?」
「不可能だと申し上げました」
…………だったね。
「けどなぁ」
「何か?」
「ヒモっぽくない?」
「それは異世界でもそうだったでしょう?」
「ぬぐ……」
言われてみれば、その通りではあった。
「ヒモ……か。まぁ確かにね。けど能力的には僕の方が暗殺には向いているんだけど……その辺はどうなのかな? ダメ? 不適合?」
「さて、どうでしょう」
からかう様に彼女は笑った。