005 湯豆腐
「いただきます」
とのことで、夕飯に。
「美味しいですね。このキノコ」
フォトンは椎茸を気に入ったらしい。
スーパーで売ってる原木椎茸だ。
香りも大きさも値段相応。
「この豆腐……? 美味しい……」
リリアもご満悦の様子で。
「キッチンの勉強もしないとねぇ」
「です」
フィリア。
ジャンヌ。
「ネギが大きい」
イナフは其処に戦慄していた。
しばらくよそって食べる。
「結局ツナデ様は何をしていたので?」
ジャンヌが問うた。
「お仕事です」
「その若さで?」
「そう言いますよね」
実際、あまり年齢は関係ない。
実力の過不足が物をいう。
そんな世界だ。
「ま、何とかなりますよ。実際に今までも肩代わり程度はしてきましたし。給金も良いので生活費には困りません」
「私たちに手伝えることはありませんか?」
「火力発電所にでも就職してはいかが?」
「かりょくはつでんしょ……」
たしかにね。
燃料なしで炎を生み出せるのだ。
これ以上無い永久機関。
「それはフィリアにも言えるんじゃない?」
「かもしれませんね。実際のところ、トライデントの威力は破格を極めます。砂漠を緑に変えることも出来るでしょう」
「あー……」
フィリアも考えているようだ。
湯豆腐もぐもぐ。
「この国は平和なの?」
「前にも話した通り」
ニュースを見ると戦慄するけど。
「なんだかなぁ」
椎茸もぐもぐ。
「学校も行かなくて良いとなればどうしろと?」
「大学に行ってください」
「えー」
「お兄様なら大丈夫です」
き、期待が重い。
「ところでコレ何?」
「白菜です」
イナフの疑問にサラリとツナデ。
「シャクシャクして美味しいんだけど?」
「光栄に存じます」
そのような問題でもなかろうもん。
いいんですけどね。
「夕食後は?」
「ゲームでもしますか?」
「できます?」
「それはまぁ」
僕も同意。
「というか全員分のスマホって用意できる?」
「たしかに必要ですよね」
「スマホってコレ?」
フォトンが差し出した。
解約されているスマホ。
「通話電話の手段は持っていないと不便ですし」
はふはふと湯豆腐を食べながらツナデ。
「出来るかな?」
イナフも疑心暗鬼を生じる。
シャクシャク。
白菜が気に入ったらしい。
「慣れれば然程でもないよ」
別に気遣うわけでもないけども。
それにしても、
「はあ」
後で確かめることがある。
「人参。豚肉」
「何でも……揃いますね……」
科学の勝利ですよ、君。
「店でかっさばいてるの?」
「流石にソレは」
非効率的ですな。
「その内行くこともあるでしょうけど、色々揃っていますよ。食品から家庭品まで。ぶっちゃけ必要ない物まである始末です」
「コーラだっけ? アレは美味しかった!」
「炭酸飲料ですか」
「どゆ理屈?」
「二酸化炭素を封じただけですよ」
ソレで伝わるなら苦労は無いわけで。
「ウーニャー?」
僕の頭に乗っているウーニャーが、首を傾げた。
ま、そうなるよね。
白菜をシャクリ。
「お兄ちゃんたちにギャップはないの?」
「ちょこっと世界情勢は変わって申しますけど」
「だよねー」
「おかげで仕事に困らないのは助かるかと」
「政治家のスキャンダルも握っているし」
「屋敷内で言えば無法地帯ですよね」
全く以て。
「ウーニャー!」
税関無視も此処まで来れば腹筋崩壊。
笑うしかない……とは正にこの事で。
「なにかお兄ちゃんが悪い顔になってる……。大丈夫? 何か企んでるの? ぶっちゃけた話……」
「誠心誠意の塊だよ」
はい嘘一つ。