こういう未来もあったらいい:後
「ん……」
眼が覚めた。
ダブルベッドに僕は寝ていた。
一人では無い。
隣にはツナデ。
一応、道徳的配慮によって、いかがわしいことはしていない。
神に誓って。
ていうか『こっちの世界』に神は居ないけど。
『神を観測した世界』
『神を観測しなかった世界』
エヴェレット解釈で、世界は、この二つに分けられた。
そして今、僕らは後者に居る。
巫女が神を観測しなかった世界。
無神論を旨とする国民性の国家。
色々としがらみも引っ張ってきたけど、その誰もが後悔はしていないらしい。
とはいえ文明の進み具合が違うので、ある種の驚きは当初はあった。
慣れれば対応も早かったけど。
寝室のドアが開かれる。
「マサムネ様?」
日本人では有り得ない深緑の髪。
フォトンが入ってきた。
「朝食が出来ましたが……」
「ごめん。今起きる」
欠伸をしながらベッドを抜ける。
「ツナデは起こさなくても?」
「まぁ別にベッタリする必要もないんじゃない?」
「コーヒーで良かったでしょうか?」
「感謝」
言って僕はダイニングに顔を出す。
既にヒロインたちは、顔を揃えていた。
後刻ツナデもソレに混じる。
「マサムネ様」
とフォトン。
「あう……マサムネ……」
とリリア。
「お兄様」
とツナデ。
「お兄ちゃん」
とイナフ。
「パパ」
とウーニャー。
「マサムネちゃん」
とフィリア。
「マサムネ様」
とジャンヌ。
「……………………おはよ」
疲労の嘆息。
とりあえず目覚ましのコーヒーを飲む。
ところでウーニャーは、こちらの世界でもドラゴン魔術を使えるらしい。
フィリアのトライデント。
ジャンヌのパイロキネシス。
皆々、神のいない世界でも……だ。
何某かの理屈が在るはず。
「何故?」
とは思う。
幾つか仮説は持っているけど、此処で議論する必要も無いだろう。
とりあえず、人間社会に適応させるために人化して貰っているけど、虹色の髪と瞳はどうしても悪目立ちする。
ま、加当のお家は広いから、あまり対応に苦慮することもないけど。
今はツナデが加当の後継者で家主だ。
僕は、正当性がないけど、血が繋がっていないため、有力なツナデの番と目されている。
というかツナデに限らず(ウーニャーを除く)ヒロインたちは、僕と関係を持とうと策略を巡らせているんだけどねん。
嘆息。
本音を語れば(a)ならまだ許容できる。
けれども(b)や(c)の懇願は、僕の形而上における疲労を呼ぶ。
「なら(d)じゃなくて(e)なら良いのでは?」
そんな提案をしてくるヒロインたち。
頭の頭痛を痛めるのもしょうがない。
ことほど左様に僕らは歪だ。
義父と義兄?
いわゆる(f)に旅立たれました。
その後の手順も滞りなく。
結果として、先述したようにツナデが家督を継いだのだけど。
元が裏社会の管轄だ。
実力があれば纏め上げることは苦にしない。
僕の本気も、また加当の家のメリットとデメリットの判断に於いて、秤のこちら側へ傾かせる一因だ。
まぁ光の国で色々とやらかした前科もあるしね。
こっちの関係者には、意図不明だろうけど。
朝食をあぐあぐと食べる。
ヒロインたちが交代で食事当番を担ってくれる。
収入の方も問題なし。
というか忍の家系として、僕の能力は有益を超えていた。
収支に於ける収入過多の状況だ。
何せオーラの半径が十キロ。
こと、
「その手の作業」
においては抜群の成果を収める。
異世界に行く前は義父と義兄の手前、全力を見せることはなかったけれども。
一応確認はしたけど、フォトンは無限復元を失っていた。
その一点に置いては喜ぶべきことだ。
神の干渉の無い世界故、さもあらん。
そしてツナデと僕の憂慮していたお家事情も……ご覧の通り。
まさか失踪した不逞の息子が、ハーレムを連れて戻って来るとは、義父も義兄も思ってなどいなかっただろう。
南無八幡大菩薩。
「お兄様?」
「何でしょ?」
「愛しています」
不意にキスされた。
「「「「「あーっ!」」」」」
他のヒロインたちが驚愕に声を震わせる。
何とかならんかね……この状況。
『幸せ』か『不幸せ』かなら、間違いなく前者なんだけど。
そんなわけで一旦ここで筆を擱かせて貰います。
完全に終了したわけではなく、此処から「元の世界でハーレムラブコメ」も面白いかなと思っていたりいなかったり。
ただ他に完結させるべき作品があるので「元の世界偏」の連載には時間をください。
ここまで読んでくださった読者の皆様。
賞賛、応援、叱咤、訂正、忠告の御言葉をくださった皆様。
ブックマークならびに評価をくださった皆様。
心からの「ありがとうございます!」で二重の謝辞表明とさせていただきます。
これらの喜びがあったおかげで、此処まで書ききることが出来ました。
もしよろしければ別の作品で再会できれば幸いです。
それではノシ