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魔の国15

「魔術には……もっと言うと、この世界の森羅万象には属性というシステムが存在するんです……」


「属性という……システム……?」


 わからないと僕。


 フォトンは優しく僕に問いかける。


「以前に私はフォトン様に曜日の話はしましたよね?」


「したね。光曜日、木曜日、火曜日、土曜日、金曜日、水曜日、闇曜日だったはず。うろ覚えだけど」


「そうです」


 フォトンは頷いて、


「これは元々魔術……さらに言って世界における七属性からきているんです」


 人差し指を教鞭のように振るってそう言った。


「……?」


 キョトンとする僕。


「つまり魔術には光、闇、木、火、土、金、水の七つの属性のいずれかを介して発動し、先の光と闇を特異属性と……後の木と火と土と金と水を基本属性と呼びます。この七つの属性によって世界は成り立ち、世界の成り立ちを再現する魔術もまたこの七つの属性に縛られるんです」


「はあ……」


 おもわず生返事。


 正直フォトンが何を言っているのかさっぱりわからない。


 光と闇はともかく……木火土金水は僕のいた世界での五行相剋の成り立ちなのだろう。


 あるいは光と闇もあっちの世界での陽と陰なのだろうか?


 ともあれ、


「世界が光と闇と木と火と土と金と水で成り立っていると……」


 そう言いたいのかな……フォトンは……?


「まさに」


 否定してほしかったけど肯定されてしまった。


「いやいや」


 僕は「ないない」と首を振る。


「森羅万象がたった七つの属性で説明できるなら人類はとっくに世界の全てを理解できてるよ。実際には量子力学や相対性理論が必要であって……」


「しかして魔術は属性指定をしないと発動しません。そのりょーしりきがくやそーたいせーりろんとやらはわかりませんが魔術とは世界の創造……すなわち世界を創り上げる術の総称です。ならば属性指定が魔術に必要な以上、大神デミウルゴスによって創造された世界もまた七つの属性から成り立っているんです」


「属性ね……」


 ちょっと信じられないけどもともとが異世界である。


 巨人のトロールもいれば、この部屋の隅につっ立ってニコニコしている水の妖精ウンディーネもいるのだ。


 あっちの世界とは違う法則があることは理解しなければならないだろう。


「私たちが元々いた国の名を覚えてますか?」


「光の国でしょ?」


「はい。つまり光の国出身の魔術師には特異属性……あるいは高位属性たる光の属性を操る魔術師が他の国よりよく生まれいずることから名付けられた国なんです」


「そもそも光って何の属性さ?」


 僕は根本的なことを聞いた。


「基本属性だっけ……木火土金水はまだわかるよ。僕の世界にも五行相剋の思想はあるからね」


 デミウルゴスと五行相剋が並列していることはこの際突っ込むまい。


 どう考えても建設的な話にはなりそうにない。


 でもわからないことはある。


「光と闇の属性って何さ? 漠然としすぎてわからないんだけど……」


「光を操ることは時間を操ること。闇を操ることは空間を操ることです」


「…………」


 それは……また……壮大な……。


「ダークの縮地や、クランゼの空間破却は、闇魔術ですよ。世界宣言でも闇だと特定していたでしょう? ちなみに私がマサムネ様を召喚したのも闇魔術です」


「…………」


「対して光は私にかけられた呪い……無限復元がそうです。劣化した体の時間を即座に……最小単位時間で巻き戻して修復するんです。光魔術による時間逆行ですね」


「…………」


「基本的な自然現象だけなら木火土金水で説明できますけど……それだけでは説明できない属性として光と闇があるというわけですね」


「…………」


 なんと答えればいいのだろうか?


 脱力感に苛まれる僕。


 世界がたった七つの属性で説明できる?


 それを信じろと言うのか……。


 いやまぁ否定できないのも事実なんだけどさ。


「はぁ」


 僕は力無くそう吐息をつくと、想像創造を行ない、


「金を以て命ず。クナイ」


 世界宣言を行なった。


 次の瞬間、僕の想像通りに僕の手に一本のクナイが握られていた。


「「……っ!」」


 驚愕に目を見開くフォトンとクランゼ。


 ちなみに僕も驚いた。


 本当に金の属性を世界宣言で指定したらその通りの現象が起きたのだから。


「どうやらたった七つの属性で世界が成り立っていることを認めざるを得ない状況だね……どうも」


 うんざりと呟き、


「じゃあ……セブンゾールって何さ?」


 僕は問うた。


 答えたのはクランゼ。


「七属性全てを魔術として再現できる魔術師に贈られる称号です」


「珍しいの?」


「たいへん貴重です。現存しているセブンゾールは十人を超えません」


「その内の一人がフォトンってわけ?」


「そういうことです」


「なるほどね」


 セブンゾール……か。


 おそらくだけど《七属性制覇セブンズオール》がなまってセブンゾールと呼ばれているのだろう。


 ともあれ僕は手に持ったクナイを弄びながら、


「ま……順応するしかないよね」


 そう諦めざるをえないのだった。

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