表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
378/512

エピローグ


「いい天気だね」


「ですねぇ」


「ウーニャー」


「だね」


 僕は、フォトンとウーニャーとラセンと一緒に、馬車の荷台でのんびりしていた。


 一応目的も済んだことだし、観光旅行の続きだ。


 フォトンは僕のバーサス。


 僕がフォトンの無限復元を解く代わりに、フォトンは僕の異世界観光を手伝う。


 片方が為されたのだから、もう片方が優先されるのは当然。


 まぁ冗談だけど。


 そんな義理人情の話では無く、単にフォトンと旅するのが楽しいから。


 これに尽きる。


 ウーニャーも僕のバーサスだ。


 とりあえず何の縁かは分からないけど、ひょっこり今も付き合っている。


 竜の国に返してあげたいけど、多分無理矢理転送すると今度は竜の国が塵に還る。


 冗談でも何でも無く。


 で、最後のラセン。


 深緑の髪と瞳の美少女。


 顔の造りは都合上フォトンと同一だけど、表情筋の使い方で僕は見分けることが出来る。


 ウーニャーは無理らしい。


 出来てどうのと云う次元でもないので、これは宜しい。


 でデミウルゴスと対話が成立。


 結果として、人を人と認識することで、無尽蔵の命の存在がなくなった。


 今やフォトンとラセンは、


「殺せば死ぬ」


 存在だ。


 他者に触れても傷を治したり……ましてや死者を蘇らせることも出来ない。


 当人らはソレで満足らしいけど。


 閑話休題。


 とりあえず、ラセンはフォトンと同一個体であるから、感性も似通っているらしい、とラセンは主張した。


 要するに僕に好意を持ったとのこと。


 フォトンとウーニャーは迷惑そうに半眼で睨む物の、そもそものラセンの気質はブラッディレインであるため、そうそう怯むわけもない。


 嘆息。


 薬効煙をスーッと吸ってフーッと吐く。


 あれから世界は、少し変わった。


「慈愛と憎悪」


 の相反する二極面性ではなく、


「好きか嫌いか」


 あるいは、


「気に入ったか気に入らなかったか」


 という、人情味で人類に干渉する神様が、管理するのだ。


 エゴや冒涜、殺戮や犯罪にて、魔術が発動することはなくなった。


 この世界での魔術とは、神様に宣言することで祈りを叶えて貰う現象だ。


 結果として、神様の抱いている正義と公平に正当性に適わない魔術は発動しない。


 逆説的に、傭兵の立場が少し強くなったけど、魔術師の価値が損なわれたわけでもない。


 こと他者のため、自衛のため、人を救うため、大切な物を守るため、国民の財産と自由を守るため……かような祈りには神様は答えてくれる。


 言ってしまえば、暴虐に対するリアクション。


 こと防衛戦に於いて比類無い力を発現するのが、アレ以降の魔術の在り方だ。


 そんなわけで山賊落ちした魔術師は食いっぱぐれ、今の僕らのように馬車の護衛による魔術の行使は肯定される。


 何より大きいのは、フォトンが気軽に魔術を使えるようになったことだろう。


 とりあえず神様は理性有る魔術運営を滞りなく、フォトンもソレに準じる形で魔術を発動せざるを得ない。


 結果、常識的な魔術師と相成った。


 ウーニャーのドラゴン魔術が変わらないのは……なんだろう?


 未だにドラゴンブレスは、地平線の果てまで塵に還す能力を持っている。


 脅威と言えばあまりに脅威だが、神様は修正しようとしなかった。


 特に頼る理由も無いけど。


 あるいはソレが故か。


 薬効煙をプカプカ。


「ウーニャー!」


 ウーニャーは相変わらず御機嫌だ。


 僕の頭に乗っかって、後頭部を尻尾でペシペシ。


 馬車は進む。


 山賊の類は、魔術を使うまでもない。


 遁術で処理できる。


 基本的に遁術は、あくまで生物固有の能力であるため、神様も修正のしようがない。


 ホケーッと空を見ながら薬効煙を吸う。


「勝ったー!」


 ラセンが声を上げた。


 馬車の荷台で、フォトンとラセンは、ポーカーを興じていたのだ。


 互いにチップを載せて。


「うぅ~……」


 と唸るフォトン。


 純情さがこの際、足を引っ張っている。


 僕が見るに、ラセンはカウンティングをしている。


 元の世界のギャンブルでは禁じ手だけど、まぁ卑怯も武の内だ。


「平和だねぇ」


 あらゆる物を切り捨てた。


 そのはずだった。


 喪失感と付き合う必要がある……と覚悟はしていた。


 そのはずだった。


 が、


「うがー」


 フォトンが、悔しげに僕に抱きついてくる。


「慰めてください」


「いい子いい子」


 深緑の髪を撫でる。


「じゃあ私は褒めて!」


「お呼びじゃないよ」


「むぅ。フォトンが好きなら同一個体の私だって好みの範疇でしょ?」


 まぁね。


「ハーレム作ろうよ! 私とフォトンとウーニャー!」


「さすがに零歳児を抱く勇気は持ってない」


 というより蛮勇だろう。


 状況がバレれば金竜王に殺される。


「ところで」


 諦めて……というか妥協して、僕は二つの深緑の頭を撫でながら尋ねる。


「次の国は何て言うの?」


「それはですね――」


 大体今の僕らはこんな感じ。


 とっぴんぱらりのぷう。


ここまで読んでくださった読者様に最大級の感謝を。

異世界観光旅行編はこれにて閉幕にございます。

お帰りはあちらに。

ご退席の前に感想や評価などくだされば光栄の極み。


それではノシ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ