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天の国14


 天の国の道中で寄った都市。


 守護結界内であるため、堕天使の干渉からは逃れているけど、さて何がどうなるやら。


 嘆息。


 天使と堕天使の闘争とは別に、天使による文明の所産。


 基本的に天の国はそんな感じ。


 で、


「やっほーミカエル!」


「あ?」


 都市の表通りの酒場。


 そこにて一人の天使に、ガブリエルは気安く話しかけた。


 ていうかミカエルって。


「ガブリエルか」


「さいですさいです」


 ガブリエルはニコニコ。


 熾天使。


 神の如き者。


 神の右手にして裁きの象徴。


 色々と語られているけど、ぶっちゃけ適応されないだろう。


 ことこの世界の構築は、巫女という色眼鏡をかけたデミウルゴスの仕事だ。


 サブカルとしてのミカエルなのだろう。


 もっとも天使ソレ自体は、デミウルゴスの独断による存在らしいけど。


 知性を解せない……と云うはずはない。


 大凡、理解と実行に於ける摩擦が、人間と天使の違いなのだろうから。


 幼知万能の御手。


 幼い子どもが代行無くして、粘土でミケランジェロの創作を真似ようという試み。


 何度も言っているけど、そんな感じ。


 閑話休題。


「で、そっちは……」


 と酒を飲んでいるミカエルさん。


「人間か?」


「です」


「どうやって入ってきた?」


「努力と根性で」


 嘘では無い。


 正鵠を射てはいないとしても。


「よくまぁこんな国に来る気になったな」


 僕としても来たいわけでも無かったけど。


「まぁ天使は人間への肯定存在だからな。歓迎はする」


「懐が大きいね」


 とはラセン。


「別に殺し殺されなら堕天使の領分だからな」


 それもどうよ?


「ドラゴンまで一緒か?」


「道連れだね」


 心中とも言う。


「用件は?」


 グイと酒瓶を煽りながら、ミカエルが問うた。


「剣の国へ」


 ラセンが答える。


「あー……」


 察したような懸念したような。


 とりあえず神を弑しなければ話が進まないため中略。


「主を弑するのか?」


「まぁ」


 他の理由で剣の国を探す意図は、ちょっと見当たらない。


「で、ミカエルにも同行して貰う」


 ガブリエルがヌケヌケと言った。


「人間の頼みならしょうがない」


 酒を呷りながら、ミカエルは受諾した。


「ウーニャー。しょうがないの?」


 ラセンの頭上で、首を傾げるウーニャー。


「人類の肯定が天使の根幹な物でね」


「うん。そうこなくちゃ」


 ガブリエルもご満悦。


「で、某を巻き込んだ理由は?」


「単なる保険」


 ガブリエルの言葉は辛辣を極めた。


「天の秤があればとりあえずは心丈夫だし」


「だぁなぁ」


 異存は無いようだ。


 にしても天の秤?


 何じゃらほい?


「まま、とりあえず酒でも飲みんさい」


 ミカエルは僕らに酒を勧めた。


 僕とフォトンは遠慮。


 ウーニャーには厳禁。


 対してラセンは飲んだ。


 ザルのように。


 無限復元があるから悪酔いはしないだろうけど。


「それにしても剣の国ね」


「駄目でしょうか?」


 フォトンとしてはおっかなびっくり。


「慈愛の自滅と憎悪の自衛……。どちらが正しいってわけじゃ無くて、どちらもが正しいんだよ」


 ミカエルはサックリそう言った。


「二つの側面を持つから知性だ」


 それには同意。


「その片方しか与えられていない天使および堕天使が欠陥品なのは……まぁこの際の世界に於ける一種の通念だな」


 どちらともに人間へ向けた想いは変わらず。


「不器用な連中さ。某も含めてな」


 酒を呷るミカエル。


「デミウルゴスが居なくなって困ったりは?」


「そりゃ困る」


「やっぱり?」


 尤もな意見。


「暫定的には味方だが、損して損を取るのが天使の限界だな」


 それもどうかなぁ。


「穏便に済ませてくれるなら、ソレに越した事は無いんだが」


「…………」


 僕はジュースをグイと飲んだ。


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