天の国13
都市から都市への旅の途中。
守護結界は都市にしか存在しないため、道中は絨毯爆撃の嵐。
僕はフォトンに。
ウーニャーはラセンに。
それぞれ引っ付いている。
一人爽やかに歩いているのが、ガブリエル。
一応天使ではあるため、堕天使に対しては攻撃的で、結果として露払いの役目は果たしている。
とりあえず、
「人間が好き」
が根幹であるらしいため、色々と融通も利く。
デミウルゴスの人類慈愛は、こういうところに現われる。
それを以て、デミウルゴスを弑する手段となっているのは、先述したけどねん。
中々に皮肉な話だ。
フォトンとラセンには、沈黙して貰っている。
ウーニャーは時折空を眺め、ドラゴンブレスを吐く。
これがまた身も蓋もなく。
「真竜王陛下におかれては、論じる暇もありませんね」
暇というか隙間が無い。
存在自体がバグキャラだ。
一応天の国には連れてきてるけど、
「なんだかなぁ」
が本音だ。
要するにいつものこと。
とりあえずガブリエルに案内されながら、天の国の観光。
とはいえ天使と堕天使の戦争の爪痕は色濃く、
「地獄の沙汰だね」
そんな感じ。
「やはり私が対処した方が良いんじゃない?」
ラセンは言うけど、
「失禁するから駄目」
こっちとて、覚悟と堪忍にも限界がある。
この場合は前者。
太陽の再現をして世界宣言が、
「ファイヤーボール」
である。
もうね。
「正気ですか?」
と聞きたいくらい。
地図の書き換えすら必要になる威力。
そう云う意味ではフィリアに準じる。
空高くで戦争。
対空レーザーことウーニャーブレス。
結構自分で自分を、
「反則キャラかな?」
程度に思っていたけど、省みております。
こうなると僕が一番の足手纏い。
「マサムネ様は安心して守られていてください」
はい。
コックリ頷く。
反論の余地も無い。
「で、何処に向かってるの?」
とはラセンからガブリエルへ。
「知り合いに会いに行こうかと」
「知り合い……」
ぼんやり僕ら。
「天使?」
「他に居ませんし」
ですよねー。
「天使ならそこら中に居るじゃ無いですか」
空を指す。
まぁ一般的に、
「雨後のタケノコが如く」
が天使の存在の根幹でもある。
天の国でもソレは共通だろう。
交合して妊娠して産まれてくる様な可愛い存在なら、もう少し穏便な知性を持っているはずでもある。
何となく、皮膚常在菌の争いに巻き込まれているような錯覚を感じたけど、案外的を射ているかもしれなかった。
ポコポコ増えて、善玉菌と悪玉菌が、覇権を巡って争う。
デミウルゴスが地球神で、人類への想いが相反する感情を持っていれば……それが天使および堕天使となるのだろうか?
みゃー。
とりあえずフォトンと手を繋いで、爆撃の中を歩く。
ていうか、
「毎日こんな事して飽きない?」
ガブリエルに問うてみた。
「考えた事ないなぁ」
多分クオリアの問題だろうけど、それは無視。
「因果だね」
生まれからして呪われているでファイナルアンサー。
「まぁ中央に近づくとどうしてもね」
ガブリエルは苦笑した。
「端っこの方では文明を進めているし、安穏としたもの。そうでしょ?」
「だぁね」
否定はしない。
「多分堕天使の方も、あまり都合は変わらないと思うな」
それはそれで想像に難いんだけど……。
堕天使の文明。
むぅ。
金銭的やりとりや牧歌的光景を想像する。
羽を炎の矢に変えて人類の文明を蹂躙する堕天使が。
「…………」
頭が痛くなる想像だった。
南無阿弥陀仏。
せめて道中安らぎを。