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魔の国14

「じゃあ世界に命令すれば誰でも気楽に魔術を使えるの?」


「もしそうなら人類はとっくに滅んでいます」


 そりゃそうだ。


「じゃあ儀式をしたり怪しげな呪文を唱えたり神に祈ったり色々しなきゃいけないの?」


「いえ」


 と端的に否定してクランゼは紅茶を一口。


 そしてしばし思案するような表情の後に言った。


「魔術に必要なのはツーアクションのみです」


 ツーアクション……。


 つまり二つの過程が必要と云うことなのだろう。


「そのツーアクションを指して魔術師たちは《想像創造》および《世界宣言》と呼んでいます」


「想像創造……世界宣言……」


「はい」


「その過程さえ経れば魔術は使えるの?」


「理論上は」


 コクリと首肯される。


「で、その想像創造と世界宣言って何さ?」


「まず世界宣言ですが……」


 想像創造から説明するのが筋じゃない?


 そんな僕の表情を読み取ったのだろうクランゼは苦笑する。


「一応簡単な方から説明するのが筋かと……」


「はあ」


 そりゃどうも。


「で、世界宣言ですが……これは読んで字の如く、ですね」


「世界に宣言するの?」


「そういうことです。呪文と呼べば尚わかりやすいでしょうか?」


「呪文ね……」


 フォトンやクランゼが魔術を行使する際に唱えていた意味不明な言葉の羅列がソレなのだろう。


「つまり世界に対して……正確には大神デミウルゴスに対して『これこれこういう現象を起こしてください』と宣言するんです。すると世界がその宣言の通りに世界を変質……あるいは創造するのです」


「故に世界宣言……」


「然りです」


 僕は紅茶を一口。


 フォトンも紅茶を一口。


 クランゼも紅茶を一口。


 そして、


「そして世界宣言の前に行わなければならないアクションが想像創造です」


 クランゼが言葉を続ける。


「そっちはいまいちわからないんだけど」


 僕がそう困惑すると、


「わかってますよ」


 と頷いてクランゼは紅茶を一口。


「結論から言ってしまえば想像創造はイメージすることです」


「イメージ?」


「はい」


 そんな難しそうな話には聞こえないんだけど……。


「ただし並のイメージではありません」


 というと?


「世界を変革および創造するのが魔術です。故に魔術において想像創造に求められるイメージのクオリティは常軌を逸しています。言ってしまえば自分自身さえ騙すほどの……自己暗示にも似た強烈なイメージを持たなければなりません」


「想いを以て当りと為す……って奴?」


「然りです」


 なるほどね。


 クランゼは肩をすくめる。


「これが熟練の魔術師でも難しいんです。なにせ求められる強烈なイメージは、つまり病的なソレですからね」


「脳の機能を破壊しなきゃいけないってこと?」


「まぁはばからずに言えばその通りです」


「じゃあ普通の人間には無理じゃない?」


 世界を創るための病的な想像なんて一般人の及ぶ範囲ではないんじゃないかと思うんだけどな。


「一応のところ脳の機能を魔術向けにする薬などもありますから絶対不可能とも言えないんですけど」


「それって麻薬……?」


「麻薬の親戚ですね」


 あっさり言うな~。


「とまれ、異世界の住人であるマサムネ様にはわからないでしょうけど、そんな技術があるのがわたくしたちの世界なのです」


「僕にも使えるかな?」


「どうでしょうか……」


 困惑するようなクランゼ。


「多分使えるんじゃないですか?」


 これはフォトン。


 シュシュで纏められた深緑の髪のおさげがヒョコヒョコと揺れる。


「魔術に必要なのは想像創造と世界宣言。ならば意志と言葉を以て魔術とは成るモノ。そのどちらもマサムネ様は持っていますし」


 ふむ……。


「試にやってみようか」


 僕はそう言うと、


「え?」


「は?」


 ポカンとするフォトンとクランゼを無視して自己に暗示をかける。


 そして世界宣言。


「クナイ!」


 そして魔術が……世界の創造が……クナイが……生まれなかった。


「あれ? 自己暗示が足りてない? 精神集中は得意なんだけどな……」


「ええと、マサムネ様の想像創造がどの程度のモノなのかはわかりかねます。しかし言うのを忘れていましたけど世界宣言にも条件があるんです」


 フォトンがそう言う。


「条件とな」


「はい。属性指定という条件です」


「属性?」


 それはいったいなんじゃらほい?

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