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天の国08


 とりあえず天の国に行く事になる。


 マッピングは出来ている。


 ウーニャーのオーラから逆算して、大陸の網羅も完璧だ。


 で、空間破却。


 空間を破壊して転移する技術。


 転移した先は、


「あれ?」


 天の国の端っこだった。


 家がある。


 街がある。


 市場があって文明がある。


 一応文明については把握していたけど、僕は天の国の中央に跳躍したつもりなんだけどな。


「何故に?」


「おそらく大神の自衛装置でしょう」


 とラセン。


 妥当な推論だ。


 魔術の根幹をデミウルゴスに握られている以上、最終決断はデミウルゴスの手中にあって必然。


 こと自滅願望に対するカウンターと覚えれば、思索に値する。


「わお。人間ですね」


 一人の絶世の美女が、こちらに気づいて声を掛けてきた。


 女性だ。


 ローブを幾重にも纏った神話の再現のような出で立ち。


 なお名工ですら彫れないだろう卓越した美貌にスタイル。


 神の造形物。


 天使である。


「どうやって天の国に?」


「色々とね」


 手の内を明かすのも、少し懸念してしまう。


「まぁいいわ」


 追求しないらしい。


「せっかくのお客様だもの。歓迎させて貰うわ」


「だそうで」


 僕がフォトンとウーニャーとラセンに視線をやると、かしまし娘はポカンとしていた。


「文明が……ある……?」


 まぁ天使からは想像出来ないだろう。


 僕にも不思議ではある。


「名乗らないとね。私はガブリエル。これでもちょこっと偉い天使よ?」


 どこら辺がちょこっとだろう?


 三大天使。


 四大天使。


 七大天使。


 十熾天使。


 その名が、こぼれ落ちる事なき、最上級の天使の呼び方だ。


「本当に此処が?」


 とはラセン。


「……ウーニャー」


 ウーニャーも信じ難いらしい。


「多分」


 確信は無いけど。


 それでも都市の歩く人歩く人背中から羽を生やしている。


 有翼人種の可能性も巫女の馬鹿さ加減なら在るかも知れないけど、まぁ天使の国と取ってまず間違いない。


 当人がガブリエルって言ってるし。


「とりあえず宿とかある?」


「人間なら大歓迎」


 ガブリエルは朗らかに笑った。


「高級ホテルに泊まっていって。御代は要らないわ」


「いいんですか?」


 フォトンが再確認すると、


「こういうことは絶無……ではないけど貴重だから。人間のお客様は先述したように大歓迎」


 キャピッと悪戯っぽく笑うガブリエルだった。


 それから宿にチェックインして、僕らは観光に時間をまわした。


 僕は事前に察知していたけど、どうにもこうにも。


 理解しがたいというか何というか。


 なんで神の触覚である天使が、文明を築いているんだろう?


 とりあえず食堂に入ってモリモリと食事を取る。


「普通に美味いな」


「そ」


 我が事のように嬉しそうなガブリエル。


 当人は何も食べていない。


 この辺りは天使らしい。


「天使の食堂……」


 気持ちは分かる。


 基本的に天使ははた迷惑な存在だ。


 天使と堕天使が人間観察のために降臨し、互いに相打つ。


 堕天使は、亜人を引き連れ、人間を憎悪し、悲嘆と哀惜と虚無を採取する。


 一方の天使は、堕天使に対するカウンターで、人間を慈愛し、救済と祝福と歓喜を与える。


 この憎悪と慈愛の両極端が天使という神の触覚だ。


 人類としては、


「争うなら他でやってくれ」


 が正直な気持ちだが、デミウルゴスが世界を運営して、なお上手く回っている以上、


「不幸な事件だった」


 で茶を濁すしかないのが現状である。


 それを前提として天の国……天使の国と聞けば、


「天使と堕天使が無節操に暴れ回る国」


 とのフォトンの想像は実に理にかなっている。


 結果として裏切られているけど。


「どゆこと?」


 首を傾げるフォトンだった。


 そしてそれは僕とウーニャーとラセンの代弁でもある。


「偏に意味不明」


 は僕らの共有するところだったから。


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