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天の国04


「マサムネは察しがいいね」


「ヒントはあったし」


「ヒント?」


 とはフォトンとウーニャー。


 とりあえず、


「ラセンの二つ名は?」


「ブラッディレイン……」


「正解」


 直訳して血の雨。


 惨殺現象に似合った通り名だろう。


 目の前で苦笑しながら葡萄酒を嗜んでいるけど。


「何で人を虐殺してると思う?」


「?」


 と一人と一匹。


「ラセン?」


「趣味だから」


 嘘つけ。


「マサムネは大方予想が付いているんでしょう?」


「予想を先述して外れたら恥ずかしいでしょ」


「思索能力に於いては十分だと思うけど……」


 お褒め預かり恐悦至極。


「えーと」


 葡萄酒を飲みながらラセンは言葉を選んでいた。


「とりあえず何で虐殺を繰り返すのか……だったね」


「です」


「あえて言うならその様に造られたから」


 そんなラセン。


 予想通りではある。


「造られた?」


 とフォトン。


「まぁ」


 とラセン。


 葡萄酒。


「そもそもに於いて」


 と果汁ジュースを飲みながら僕が言う。


「ラセンが虐殺を繰り返して……その後に救済をするでしょ?」


 さっきの凶行も既に無かった事になっている。


 であるから村で歓待を受けているのだけれど。


「何かに似てると思わない?」


「何かに……」


「似ている……」


 フォトンとウーニャーはしばし考えた。


 鏖殺と救済という矛盾する二極化。


 その体現であるラセンの性質。


 既にソレを僕らは目にしている。


「天使と堕天使……?」


 正解。


 神のインタフェース。


 人類愛と人類憎にて顕現される……魔術と並ぶ人間理解の象徴。


 巫女は言った。


「能動的人間理解が天使で、受動的人間理解が魔術だ」


 と。


 その天使に於いて愛憎模様相半ばするのが天使と堕天使という背中合わせの存在。


 完全なる善と完全なる悪という常識では有り得ない触覚だ。


「じゃあラセンが人を殺して回って後に救済するのは……」


「だね」


 ラセンは頷いて葡萄酒を飲む。


「天使及び堕天使と同じ機能を搭載しているから」


 つまり何が言いたいかというと、


「マサムネ?」


「この世界の設計者である巫女の意見を聞かず大神デミウルゴスが独断と偏見で造った人間。それがラセンなんでしょ?」


「良く出来ました」


 パチパチとラセンは手を叩いた。


「当然ながら」


 とアルコールの息を吐くラセン。


「星を管理する知性体が巫女の助言無しに人間を構築しようとすればどうしても神様寄りの造型に偏っちゃうよね?」


 幼知万能らしいから。


 酒を飲みながら皮肉った。


「姿形こそ人間の枠内に収まっては居るけど、超常的な復元能力と、堕天使の人類憎悪と、天使の人類慈愛。要するに神様の『これが人間かも?』っていうあやふやな造型を元に造られたのが私ってワケ」


「異端……」


「その通り」


 葡萄酒をグビリ。


「要するに幼知万能……子どもが粘土細工で何かを真似ても完璧な模倣には程遠い作品が出来上がるでしょ? 私はその典型」


 神が巫女にかかわらずに幼稚な知識で造った人間。


 結果として神や天使の都合を身に潜めた人間以上にして人間以下の知性体として顕現さるる。


 そう言う事だ。


「ウーニャー……」


 ウーニャーもどこか呆れ声。


 僕としても嘆息したいくらいだ。


 予想と結果が擦り合ったとて、手放しで喜べる物でも無い。


 結論として、ラセンが何故ブラッディレインかを再確認しただけの事だ。


「殺戮と救済……」


 天使と堕天使。


 慈愛と憎悪。


 デミウルゴス自身の人間に対する感想と云うわけだ。


 そりゃ人外な能力も得るという物。


 要するに人間というフィギュアに神様が魔改造したような物である。


 あるいは世界をゲームとするなら、


「キャラを自分で造ろうとしてバグキャラを生成した」


 とも云える。


 因果な渡世である。


 僕はジュースを飲み終えると薬効煙に火を点けた。


 ほにゃら。


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