天の国02
「辿り着けない?」
「そ」
簡潔な首肯。
「も少し詳しく」
「天の国は迷いの森って呼ばれるセキュリティに守られてるの」
「迷いの森……」
「一種の自衛装置ね。自滅願望があるんだから自衛願望があったって不自然じゃ無いでしょ?」
ごもっとも。
「その迷いの森は何処に?」
「大陸の中央」
「よくもまぁ」
まぁね。
それね。
「催眠の類かな?」
「似たような物かな?」
「辿り着いた人間は?」
「寡聞にして聞いてないなぁ」
だろうけどさ。
「突破方法は知ってる?」
「特に興味が無いから知らない。ていうか私としてはデミウルゴスに死んで欲しくないんだけど」
「諦めて」
「マサムネは残酷だよ」
自認程度はしてるけどね~。
嘆息。
なるほど。
ラセンが辿り着けないわけだ。
そして大陸の中央に存在するなら迷いの森はおそらく僕らも入ったことがあるはずだ。
ただどこの林道がソレに値するのか?
それがちょっとわからない。
そう言った記憶に残らない誘導こそが既に大神の手の平の上なのだろう。
「とりあえず天の国……か」
「行けるんですか?」
「手段としてはね」
「行けるの?」
「手段としてはね」
フォトンと巫女は似たような事を言った。
ウーニャーは何も考えていない。
「その前にラセンを拾っていこう」
「え……」
とフォトン。
「正気ですか?」
「自信はあんまり無い」
それは確かだ。
「なもんで」
僕は頭に乗っているウーニャーの首根っこを掴んで持ち上げると、それをフォトンの頭に置いた。
「ウーニャー?」
意味が分からないらしい。
説明してないから当たり前だけど。
それから僕はフォトンの手を取る。
「ふぇあ?」
狼狽するフォトン。
「あの……これは……」
「ちょっと脳に負荷をかけるから無限復元の助力を得る」
「負荷……ですか?」
ソレには応えず僕はオーラを広げる。
フォトンとウーニャーを包むくらい。
演算。
零一の配列をデータに置き換えて自己認識。
ウーニャー!
そんな感じ。
試運転に問題は無かった。
後はコレをウーニャーの全知覚に対応できるかなんだけど……、
「ウーニャー?」
「ウーニャー?」
「オーラを全開で広げて」
「ウーニャー……」
気後れ。
まぁそうだろう。
オーラの知覚をデータに落とし込む訓練はしていなかった。
ウーニャーにしてみれば大陸を網羅するオーラの知覚は煩雑にして膨大な情報でしかない。
「大丈夫。フォトンの無限復元が支援してくれるから」
「それでウーニャーを」
「だね」
「ウーニャー……それなら……」
とウーニャーはオーラを広げる。
同時に僕は目を閉じた。
この際五感は邪魔だ。
オーラの知覚は脳の領域を体外に広げる技術。
そして遁術は対象の脳へのクラッキングに他ならない。
ウーニャーが大陸全体をオーラで知覚する。
そのウーニャーの脳情報をクラッキングして自身の脳にダウンロード。
迷いの森や天の国まで把握。
ついでにラセンの位置も。
「もういいよ」
「ウーニャー」
オーラを引っ込めるウーニャー。
フォトンの頭の上でクテッとしていた。
「それじゃ跳ぶよ」
「どこに?」
「まずはラセンの居所。次に天の国」
「行けるんですか?」
「大丈夫。任せて」
「なんだかなぁ……」
とは巫女の諦め。
「闇を以て命ず。空間破却」
僕らは空間を跳躍した。