鉄の国22
とりあえず八十階層で一泊してから、冒険者に貰った食事を取り、水場で体を清潔にして、ダンジョン攻略。
八十一階層。
冒険者に忠告を受けたキングミノタウロスというミノタウロスの上位互換が現われた。
クレイモアを持って襲いかかってくる。
「…………」
僕はプカ~と薬効煙を吸ってるだけ。
その頭上から七色の閃光が奔る。
毎度お馴染みレインボーブレス。
さっくりと灰は灰に。
あっさりと塵は塵に。
いくらダンジョンが複雑怪奇で難易度が高かろうと、それはあくまで、
「対人間」
を想定している。
前提として、
「冒険者を苦しませる」
が定義されているのだ。
が、僕とツナデは忍。
フォトンは無限復元。
ウーニャーは竜王。
さすがにこんな、
「どうも。人間止めてます」
なパーティへの対応はダンジョンマニュアルには存在しないだろう。
南無三宝。
色々と台無しな感じは受けるけど、それが事実なのだからしょうがない。
特にフォトンとウーニャーは、
「そもそもダンジョンに挑むこと自体が間違っている」
としか言えない。
日曜日を英語訳した漫画雑誌の、とある作品で言うところの、
「逆セリエA」
「セリエ∀」
と云った感じ。
我ながら、
「大人げない」
ことをしているものだ。
現実逃避気味に薬効煙を吸う。
「ウーニャー!」
ウーニャーは絶好調だった。
どうも僕の役に立てることが嬉しいらしい。
そゆところは可愛らしい。
基本的に純粋無垢。
天真爛漫で意思快活。
何かにつけ憂鬱になる僕を笑い飛ばす存在だ。
もしかして後頭部への尻尾ペシペシは僕を発憤させているのだろうか?
そんなことを思う。
「パパ!」
「あいあい」
「褒めて!」
「いい子いい子」
頭のウーニャーの頭を撫でる。
「もはや出番もありませんね」
とツナデは楽観論かつ事実論。
「私は元より役に立っていませんが」
フォトンは眉を寄せていた。
「まぁ最悪の事態を想定してだから」
ヒラヒラと手を振る。
オーラに敵性を感知。
「キングボーンドラゴンとキングミノタウロスかぁ」
ご苦労なこって。
「ウーニャー! 鬱陶しい!」
ブレス。
灼光。
虚空。
「いいんでしょうか? こんなんで……」
勘案するには遅すぎる。
僕はもっと早い段階で悩んでいた事項だ。
「ダンジョンを楽しむ」
という意味では微妙に正攻法からファウルラインを越してはいる。
が、言ってしまえばそれが、
「僕ららしい」
のも事実の側面ではあった。
圧倒的戦力で意見を押し通す。
その様に開始して過程を経て結果を勝ち取る。
先に言ってるけど僕らは既に政略的な意味を持っている。
その気になれば国丸ごと相手できるのだ。
意味が無いからしないだけで。
「抑止力」
というには何処の国にも属していないし、
「野蛮」
というにはリアクション過多な気もする。
基本的に僕らが威力を振るうのは僕らに敵した対象だけだ。
「ならダンジョンのモンスターはどうなんだ?」
と云われると少し考えるところもあるけれど。
元より冒険者の糧になる存在なため、色々と業は深い。
僕らには十把一絡げだけど、本来としては実りある成長への種でもある。
何だかなぁ。
「とりあえずイオルとやらを保護して白金のオレイカルコスを持ち帰れば暫定的に問題なしでしょ」
「うーん」
その場合はフォトンの力が要るのもまた事実だ。
だから連れてきたんだけど。
「ウーニャー」
「ウーニャー?」
「後方に七体。掃滅して」
「ウーニャー!」
概ねに於いてそう言った手応え。