表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
352/512

鉄の国19


 朝。


 ダンジョンでは時間がわからないけどそれはともあれ。


 体内時計が朝だと告げている。


 概ね機械式時計と能力は比例する。


 こういうのも忍者八門の一種だ。


 寝起きにムニャムニャするのもしょうがないけど。


 で、市場で朝食を取ろうとすると、魚があった。


「何処で?」


 と聞くと、


「水場で泳いでますよ」


 と返ってくる。


 オーラを広げる。


 水場は確かに有って魚が泳いでいる。


 身もしまっているし美味しそうだ。


 が、


「とりあえずは朝食」


 とパンとスープと焼き魚。


「はぁ。温まる」


 ホッと一息。


 十階ごとに休憩所があるのは有り難かった。


 とりあえずは休憩できるのが大きい。


 別段ダンジョンで寝てどうのと言うわけでもないし、休憩所だからと気を抜いているわけでもない。


 けれども精神的抑圧とは距離を取れるのもメリットではあろう。


 で、朝食をとり終えると、


「よし」


 と水場に釣り糸を垂らす。


「ダンジョンに来てまで釣りか」


 とは思われるだろうけど、中々に久方ぶりだ。


 ホケーッとしてれば結果が出る。


 そういう意味では釣りは心の栄養である。


「ウーニャー……」


 ウーニャーも僕の頭の上でリラックス。


 ボーッとする一人と一匹。


 クイクイと釣り竿が自己主張。


 ピッと引っ張る。


 魚が釣れた。


 美味そうだ。


「塩焼きにして」


 とフォトンに手渡す。


「はいな」


 とフォトン。


 そしてツナデが火を用意して串刺しで炙る。


 似たように魚を釣り上げる。


「ただひたすらに安穏と」


 血生臭くないのは良いことだ。


 釣りは無常を感じられる。


 そんなわけで釣り糸を垂らす。


「ウーニャー。ところで」


 とこれはウーニャー。


「なんでっしゃろ?」


 と僕。


「身も蓋もないんだけど……」


 尻尾ペシペシ。


「遁術で魚を捕まえられないの」


 本当に身も蓋もないね。


「出来るよ?」


「やはし?」


「ええ」


 ただし乱獲の元になるから実行はしないけど。


 一応魚にも脳はあるため遁術の範囲内だ。


 雷遁の術でも使えば水面に魚の死体が浮き上がるだろう。


 その場合生態系に致命傷を与えることになるのがネック。


 そゆこと。


 まぁぶっちゃけると、


「魚の塩焼きは釣りのついで」


 も否定は出来ないんだけどさ。


「ウーニャー。だね」


 ウーニャーも分かってはいるらしい。


 魚の塩焼きをガジガジ食べながら釣りに没頭する。


 五匹ほど釣ったところで取りやめる。


 ダンジョンという隔離した場所での魚の繁栄を阻害するのは旨くない。


 ので自重。


 とりあえずはまぁ、


「美味し」


 魚の塩焼きをガジガジ。


「ん。美味しいですね」


 フォトンもほころんだ。


「ですです」


 とツナデも同意。


 トライデントがあれば干物に出来る。


 無い物ねだりは生産的じゃないんだけどねん。


「いい加減人も減りましたね」


「さすがここまで潜ればね」


 ガジガジ。


 完全な実力主義。


 故に命をチップに稼ぐのがダンジョン攻略の醍醐味だろう。


 かっこ僕らは例外かっことじ。


 命をチップにするほど追い詰められてもいない。


 周りは胡乱げな視線を向けるけど。


「今から冒険者らしい格好して間に合うと思う?」


「無理です」


「以下同文」


「だよねぇ」


 遅きに失するというか。


 あんまり鎧を着た自分というものを思い浮かべられなかった。


 忍びとしては、


「暗器や忍具以外は身軽に」


 が信条でもある。


 魚の塩焼きをガジガジ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ