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魔の国12

 レンガ造りの古くさい部屋にて。


 広さはまぁまぁ。


 大学の研究室くらいはあるだろう。


 部屋の端には本棚がズラリ……そこに本や書類がパンパンに詰められていた。


 そして窓を背負って威圧感のある机と社長椅子がおいてあり、中央には接客用だろうソファとテーブルがあった。


 それから人が一人……というか化け物が一鬼。


「教授……帰られましたか」


 化け物はそう教授……クランゼのことだろう……を歓迎した。


 水の化け物だ。


 外見そのものは美少女と言っていいだろう。


 ただし彫刻的に……あるいはモデリング的に言えばである。


 形相はいいとして、質料に問題があった。


 水なのだ。


 水が人の形を取り……美少女として成り立っているのである。


「ウンディーネ……早速で悪いけど茶を出してもらえる? 三人分……」


「はい教授。承りました」


 クランゼに命令されて水の美少女……ウンディーネは茶の用意を始めた。


「……ウンディーネ?」


 かすれた声で僕が問う。


 ウンディーネといえば現実世界ではフィクションにおける水の妖精だったはず。


 じっさい水が纏まって人型をとっているけど……まさか……。


「知ってらっしゃるのですかマサムネ様?」


「僕の世界では水の妖精ってことになってるけど……」


「その通りです」


 フォトンはあっさりと首肯する。


「ワールドマジックによる産物ですよ。妖精の一種です」


「妖精がいるの……こっちの世界は……」


「そちらの世界にはいないのですか?」


「……多分……だけど……」


「そういえば魔術が無い世界でしたねマサムネ様の世界は……」


 うんうんとフォトンは頷く。


「ならばワールドマジックが無くとも不思議ではありません。それではトロールなどもいないのですか?」


 忍術で倒した筋肉隆々の化け物を思い出して僕は肯定する。


「いないね」


「やはり」


 我が意を得たりとフォトン。


 そうこう話しているとウンディーネが接客用のテーブルに三つ、紅茶の入ったティーカップを置くのだった。


「ありがとうウンディーネ」


 クランゼがそう謝礼をすると、


「いえいえ。教授のためですもの」


 ウンディーネは恐縮する。


「なんでウンディーネがクランゼの言うことを聞くの?」


 問うた僕に、


「使い魔にしたからですよ」


 クランゼがそう言った。


「使い魔?」


「はい」


 ……えーと、


「使い魔ってあの使い魔?」


 使い魔だよね?


「他にどの使い魔がありましょうや……」


 確かに愚問だ。


「ではフォトン様、マサムネ様、どうぞソファへ」


 クランゼは僕とフォトンをソファへと導く。


 言われるがままにソファに座る僕とフォトン。


 ウンディーネを見ると、ニコニコと微笑をたたえていた。


 水で出来ているというのに足元の床を濡らすこともなく、重力に惹かれて水たまりになることもなく、水の人型であり続けている。


 奇異なることだ。


 フォトンはこれを魔術の産物といった。


 それだけでこっちの世界の遁術とは違うのだと理解できる。


 いや……まぁそんなことはフォトンのファイヤーボールを見た時からわかってはいるのだけど。


 ともあれ……僕とフォトンはソファに座った後、ウンディーネの準備してくれた紅茶を一口飲んだ。


 そして僕とフォトンの座っているソファと机を挟んで対峙しているソファにクランゼは座るのだった。


「…………」


「…………」


「…………」


 しばし紅茶を飲み間をとる僕たち。


 そしてカチンと受け皿にティーカップを打ち鳴らして安置した後、クランゼが言の葉を発した。


「さて……」


 と切り出し、


「フォトン様とマサムネ様においては何のための魔術学院でありましょうぞ?」


 そんな問い。


 僕の代わりにフォトンが答える。


「まずは紹介させていただきます」


「?」


「私はフォトンです」


 そんな当たり前の言葉に、


「知っております」


 頷くクランゼ。


「そしてこちらがマサムネ様です」


 僕を指してフォトン。


「それも知っております」


 頷くクランゼ。


「マサムネ様は私が異世界より召喚せしめた御方です」


 その言葉に、


「……っ!」


 クランゼは絶句した。


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