鉄の国16
そして三十六階層。
オーラでマッピング。
段々広くなってきているけどまだ十二分に範囲内だ。
出てくるモンスターの質が変わった。
包帯だらけの人型モンスター。
名をマミー。
それから骨の騎士。
名をスケルトンナイト。
それからボスエリアを通じて発生するミノタウロス。
マミーとミノタウロスはとりあえず問題外。
実体を持っている以上、脳を潰せば終わる。
基本的にミノタウロス程度はまだ脅威とは言えない。
一番厄介なのはスケルトンナイトだ。
骨だけで出来ているため脳が無く、結果として遁術が通じない。
コルトガバメントも威力としてはちと弱い。
どうやって意識の取捨選択をしているのか?
概ねに於いてそんな疑問が湧くけど、
「まぁクラゲにも脳が無いしね」
と自分で自分の愚痴をねじ伏せる。
冒険者とすれ違うフロアでのウーニャーは戦力として数えるわけにはいかない。
ドラゴンブレスなら鎧袖一触だろうけど、
「ウーニャーの価値」
を知られると非常に厄介なことになる。
なのでここは僕の出番。
超振動兼超高熱刀。
ザクザクと切り滅ぼしながら階下に進む。
マミーとミノタウロスをツナデが処理。
スケルトンナイトを僕が処理。
そんな感じで進む。
「薬効煙」
「ファイヤー」
そんな世界宣言。
いつもの通りプカプカ。
「グルアアアア!」
ミノタウロスが吠えたけど、
「…………」
凄まじいポイント射撃で銃弾がその瞳を潰す。
それから印を結んで術名。
「火遁の術」
灼熱の幻覚。
それがミノタウロスを襲った。
「――――!」
悶絶する。
狂乱する。
「恨むなら神様をね」
僕がそう言って介錯。
超振動兼超高熱刀。
首を断つ。
それから、
「お腹が空きました」
とツナデ。
まぁオーラはカロリーを消費する。
僕レベルになるとさして問題とは言えないけど、常識的にはツナデの反応の方がまっこと正しい。
とりあえず魔術で火を用意してパンと干し肉を焼いて食べる僕らだった。
「モンスターが出る階層で何をやっているか」
とのツッコミもあるだろうけど、さほど問題でも無い。
とりあえずツナデに習って僕とフォトンも食事にする。
フォトンの取り出したカップに魔術で純水を注ぎ水分も取る。
通り過ぎる他パーティが、
「何事か」
と僕らを見やったけど、
「ども」
と挨拶するに留める。
中には下卑た視線でフォトンとツナデを見る冒険者も居る。
まぁ三十六階層以下に居るのだ。
ミノタウロスを倒せる逸材でありながら美少女。
言っては何だけど良い物件だろう。
「ここで休憩か?」
冒険者が尋ねてきた。
「ええ」
と僕。
「兄ちゃん良い目見てんじゃねえか」
「恐縮だね」
干し肉をガジガジ。
パンをもむもむ。
うむ。
美味し。
「そっちの嬢ちゃんらを紹介してくれんか?」
「勝手にアプローチしてください」
切り捨てた。
「とさ。見捨てられたもんだな嬢ちゃんたち」
冒険者は皮肉った。
「まぁマサムネ様ならそうでしょうね」
「お兄様ですから」
どーゆー意味だ。
「こっちと一緒しねぇ? 結構このダンジョンには詳しいぜ?」
「別に不便もありませんので」
「以下同文」
「こっちの方がひょろっちぃ兄ちゃんより頼りになるぜ」
「寝言は」
「寝て言ってください」
こう云うときだけ呼吸の合うフォトンとツナデだった。
「なんだぁ? 過小評価か?」
「客観的な」
「評価です」
「おもしれえ」
何が?