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鉄の国14


 三十階層以下を攻略開始。


 主要モンスターはポイズンモスとミニドラゴン。


 ポイズンモスは羽の鱗粉が毒素を持っているとのこと。


 ミニドラゴンは正確にはドラゴンではなく(というのもドラゴンは確固として社会に存在しているため)大きめのトカゲで火を吐く。


 以上。


 こと僕とツナデに毒は効かない。


 フォトンには無限復元がある。


 ウーニャーには利くだろうけど、フォトンの無尽蔵なフォローがあるためこの際どうにでもなる。


 ミニドラゴンの方は初心者キラーと呼ばれるらしく、中々硬い鱗と灼熱の火を吐く攻撃力で厄介らしい。


 初心者が慢心して三十階層以下に乗り出してミニドラゴンに相対すると、剣が効かず、炎の前には鎧も通じずお陀仏。


 そんな感じ。


 で、僕らは初心者。


「…………」


 ツナデが拳銃でポイズンモスを殺しミニドラゴンの双眸を潰す。


 後に、想像創造および世界宣言。


「火と金を以て命ず。超振動兼超高熱刀」


 僕が武器を手にする。


 高速で振動し、なお灼熱を纏った刀身。


 野太刀のソレだ。


 視界を潰されて悶え苦しむミニドラゴンを介錯する。


 火炎を躱す。


 次なるモンスターだ。


 加速一閃……超速のレベルで剣を振るうと出血が伴った。


 振る鱗粉の毒を剣風で吹き散らす。


 炎が焼いたのは僕の残像。


 ミニドラゴンの火炎もポイズンモスの鱗粉も振り切って斬撃の暴風雨。


 一瞬で姿勢を立て直し、次なるに牽制。


 その斬撃が実へと変わる……曰く斬殺。


 とりあえず三十階層レベルはまだまだ僕らの手を患わせはしないらしい。


 ウーニャーのドラゴンブレスが使えれば話は早いんだけど、他の冒険者が見ている傍で使うわけにもいかない。


 だいたいダンジョン事情を覚えたけど、


「攻略に有利になりそうな要素に関しては我武者羅に」


 が冒険者たちの理念らしい。


 当然、


「一切滅却」


 を旨とするウーニャーのレインボーブレスを見せれば利用しようとする輩は枚挙に暇がないだろう。


 であるため、人目がある内はウーニャーは単なる僕の兜になって貰っていた。


 ウーニャーのドラゴンスケイルは万物を弾く鉄壁の鎧だ。


「ウーニャー」


 ウーニャーにもその辺の事情は諭しているため「出番無し」と尻尾で僕の後頭部をペシペシ叩くに留まる。


 仮に僕が害されれば、モンスターであれ冒険者であれ間違いなく殲滅してくれるだろう。


 色々と便利ではある。


 元よりこの世界における最強の一角なのだから。


 光闇木火土金水の頂点を極めた七竜王すら凌駕する戦力。


 竜の国のアイドル。


 ウーニャー。


 なんというか……僕たちという世俗に塗れて感性に少し俗物感が彩られている気もするけど。


 あまり考えないようにしよう。


 一応元気で傷一つついていないため金竜王との約束は果たしている。


 教育的には黙秘を決め込むけど、誓いを違えているわけでもない。


 ……と信じたい。


 煙を吸って吐く。


「ウーニャー? パパ、考え事?」


「気のせい」


 当人に訥々と話すのも躊躇われる。


「ポイズンモスの鱗粉を吸っちゃ駄目だよ?」


「ウーニャー!」


 尻尾ペシペシ。


 分かってはいるらしい。


「まぁ無限復元が居るんだからさほど重大事でもないけどね」


「畏れ入ります」


 とはフォトンの言。


「ウーニャー! 便利だね! 無限復元!」


「こっちとしては呪いなのですけど」


「違いないです」


 ツナデが苦笑した。


 不死には不死の事情あり……か。


 ま、ここでうだうだ議論することでも無いけど。


「…………」


 ツナデのオーラが広がった。


「ここは僕が」


 タンと跳ぶ。一瞬で間合いを潰す。


 上段に構えた熱刀が抵抗なく振り下ろされる。


 一閃。


 逆八文字にモンスターを切り裂く。


 疾風……後に再度跳躍。


 天井を蹴って落下に加速を加える。


 大上段からの一撃……不足無く斬り滅ぼし、しかして一定の処には留まらない。


 戦闘の基礎だ。


「うーん。肉体の練度が真骨頂とまではいかないか……。まぁギアも上げてないしね」


 とりあえず下へ下へ。


 基本的に露払いは僕とツナデ。


 ツナデが離れた場所から決戦して、僕がミニドラゴンの介錯。


 そんな過程を辿る。


 フォトンとウーニャーは黙々とついてきていた。


「ふむ」


 野太刀で薬効煙に着火。


 煙を吸って吐く。


「まぁ色々と魅せてくれるね」


 とはダンジョンに対する感動。


 ある種の娯楽には相違ない。


「ほう」


 と他パーティの冒険者たちが感嘆していた。


 主にツナデのコルトガバメントだ。


 知識が無いだろうから不思議な機具に映っているだろう。


 無論のことツナデは別に関心を寄せたりはしなかったけど。


 そんなこんなで三十五階層。


 ボスフロアだ。


 案の定、冒険者たちが列を作っていた。


 毎度だけどどうにかならんのかコレは。


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