鉄の国13
水場があるらしい。
女性限定で水浴びが出来るとのこと。
「男性は?」
と聞いたら、
「水場に近づいた時点で殺されても文句は言えません」
とのこと。
「では行ってらっしゃい」
とヒラヒラ手を振る。
「ウーニャー!」
尻尾ペシペシ。
「ウーニャーはパパと居る!」
「へぇへ。好きになさって」
そんなわけで僕はウーニャーを頭に乗っけて散策。
広く開放された三十階層だけど植物の類も自生しており、何というか……あまりに語彙に乏しいのだけど、
「妖精の森」
とでも呼べそうな雰囲気があった。
植物の香りを楽しみながら歩く。
「ウーニャー。パパ!」
「なぁに?」
「ウーニャーの事好き?」
「大好きだよ」
「えへあぇ」
なんだか蕩けたお声だった。
真竜王様は。
そのまま少し深い森に入る。
「何処行くの?」
「水浴び」
「ウーニャー?」
「つまり」
と僕はオーラを広げた。
「誰も使ってない水場をオーラで見つけたの」
「ウーニャー」
理解したらしい。
そして進んでいく。
「花の香り。土の香り。虫の香り……か」
こういうところは森らしい。
そして水場に着く。
誰も知らない穴場だ。
服を脱いでパンツ姿でダイブ。
ザパンと水面が跳ねて、僕とウーニャーは水に浸かった。
「ウーニャー!」
ウーニャーも嬉しそうだ。
既に人化もしている。
とはいえ水着も持ってきてないから今回ばかりは甘受せねばならない。
あまり幼女には教育上宜しくないのだけど、
「まぁ良いか」
と相成る。
が、ウーニャーの方は無邪気に、
「にゃははー」
と水場で泳ぎだしていた。
こういう純粋さは他のヒロインにも見習って欲しい。
やっぱりウーニャーは可愛いなぁ。
とまれ、
「ふう」
僕は丹念に体の汚れを落とす。
色々と埃っぽいところにいたもので。
「フォトンとツナデは大丈夫かな?」
ウーニャーの憂慮。
「害される想像が湧かないなぁ」
「ウーニャー。だね」
とりあえずウーニャーもフォトンとツナデの規格外さは把握している。
武器が無くともやり様は幾らでもあるだろう。
「フォトンが暴走しない限りに置いては」
と注釈も着くけど。
「ウーニャーは優しい子になってね?」
「難しい」
ですよねー。
基本的にハブ型恋愛模様だから各々腹に一物持っているヒロインたち。
あまり教育上宜しくない。
今度は道徳的な意味で。
なもんだから少し頭を痛めたり。
フォトン。
それからラセン。
ことソに於いての結果次第では……。
「ふぅ」
いけない。
自己嫌悪に陥るところだった。
「大丈夫? パパ……」
「まぁまぁです」
クシャッと虹色の髪を撫でる。
「この未来以外は有り得ない」
そんなのは運命論者に任せれば良いのだ。
「ウーニャー?」
「ウーニャーの魔術は一体どんな原理だろね?」
「ウーニャー」
まぁ理解してるわけないよね。
かくあるからそうある。
世の中なんてそんな物だ。
とりあえず水浴びを終えて体を拭い、服を着る。
今日はこれくらいだろう。
クエストは受けたけど、向こうとてこっちの能力が無制限とは思っていまい。
であれば王子イオルの救出までに時間の猶予はあるという事だ。
「生死を勘案しなければ」
と補足はしておく。
「なんだかなぁ」
とりあえずはキャンプ地に戻る僕。
薬効煙を加えて火を点ける。
ウーニャーも定位置について尻尾をペシペシ。
結局ダンジョンに潜っても僕らはいつも通りらしい。