鉄の国08
とりあえず二十階層。
また休憩できる場所に出た。
モンスターが出ず、市場が盛り上がっている。
ドロップアイテムの換金や食料の提供など。
特にアイテム拾ってこなかったので前者は不可能だけど。
で、
「ベーコンサンド」
と頼んで三人で席を囲み食事。
中々に注目を集めていた。
これは他の階層でも同じだったけど、何分フォトンもツナデも絶世の美少女だ。
どうしたものか?
思っても答えは出ず。
僕の頭の上に乗っている虹色のドラゴンも興味の対象だろう。
「相席、構わないかい?」
一人の冒険者が僕らに声を掛けてきた。
視線が鋭くなるフォトンとツナデ。
「どうぞ」
と僕が席を勧める。
「どうも。君らも冒険者かい?」
冒険者は僕には視線を振らずフォトンとツナデに興味を割いたらしい。
「…………」
「…………」
答えない二人。
元より未知の他人に愛敬を振りまくほど可愛い性格はしていない。
「可憐なお嬢さんだ。どうかな? 僕らのパーティと一緒しない? 色々と教えてあげられるよ? それに君らではこれから先のダンジョン攻略は危険すぎる。上層に戻らないのなら護衛は必要だろう?」
「…………」
ツッコむの馬鹿らしい。
僕はベーコンサンドをもむもむと食べる。
「無論お金を取ったりはしないよ? 僕らのパーティは紳士でね。代わりに愛してあげる。これでどうかな?」
ニコニコと体を要求するあたり心丈夫と云った所だね。
「こんな貧相な男では君らには相応しくない。なら僕らと一緒の方が良い」
「立ち去ってください」
「弱者に用はありません」
見事に二人はけんもほろろだった。
「…………」
冒険者の男の視線が細められる。
「あ? こっちは譲歩してあげているのに無下にするのか?」
段々メッキが剥げてきたね。
粗野な口調が言葉の端々に感じられる。
「こっちは良心で言ってやってるんだぞ?」
「他を当たってください」
「必要ありませんから」
中々どうしてフォトンもツナデも不遜だ。
「だったらこっちの冴えない男を殺して現実見せてやろうか?」
「出来るのでしたらね」
ツナデは嘲笑した。
明確な敵対表現。
何で僕を巻き込むよ?
「…………」
ベーコンサンドを食べる
「お前、名は?」
「ジョン」
呼吸するように嘘をついてしまいました。
「よし。俺と決闘しろ。俺が勝ったら女は貰う」
「止めた方が良いと思うんだけどなぁ」
ベーコンサンドを咀嚼嚥下して食べ終わりぼんやりと茶を飲む。
「勝てるとでも思ってるのか?」
「歯に衣着せなければ」
ああ。
お茶が美味しい。
「じゃあ立ち合え」
そんなことになった。
とりあえず二十階層で休憩している冒険者たちは僕と男との決闘でトトカルチョを始めていた。
なんだかなぁ。
「ルールは?」
「どちらかが死ぬまでだ」
スラリと鞘から剣を抜く。
…………しゃーない。
「火と金を以て命ず。超振動兼超高熱刀」
件の野太刀を具現する。
「貴様! 魔法剣士か!」
違うけど。
「じゃあ始めよっか」
僕は野太刀をユラリと垂らして歩み寄る。
冒険者が踏み込んで剣を振るってくる。
僕は野太刀でその剣を切り裂く。
「っ!」
熱したナイフでバターを切るような手応え。
「馬鹿な!」
とは男。
「ええと。どっちかが死ぬまでだっけ?」
立ち合いのルールの確認。
「ひっ!」
男は失禁した。
が、此処で見逃すと後々面倒だろう。
「殺しゃしないよ」
腕一本貰うけど。
そんなわけで肩から腕を切り取った。
高熱で切断面が焼かれたため出血の類は無い。
血が出ないから良いというわけでもないだろうけど。
衆人環視はわーわー騒いでいた。
トトカルチョで勝ったの負けたの。
こちらに迷惑がかからない分に関しては口出しの必要も無いのかな?