鉄の国07
十一階層は少し人が減っている気がした。
もっとも比較的……という話でまだまだ冒険者は冒険していたけど。
吸血コウモリやゴブリンと云ったモンスターも散見されたけど、こちらが手を出すまでもなく別の冒険者が狩ってドロップアイテムを拾う。
ネトゲと一緒でモンスターのドロップアイテムは倒した冒険者が譲らない限りにおいて横取りはタブーらしい。
別に欲しくもないけど。
冒険者の流れに身を任せながら階下に進んでいく。
ここまで戦闘一切無し。
別のパーティに華を持たせて安穏楽々と。
すると別の問題が生じた。
「舐めてんのか?」
他パーティに絡まれたのだ。
「何が?」
と僕。
意味不明な難癖であるが故に言葉の意味が読み取れない。
「他のパーティの尻を舐めてダンジョン攻略した気になってんじゃねーぞ」
「駄目なの?」
僕はフォトンとツナデに聞いた。
「さあ」
「知りません」
まぁそうだよね。
「駄目なの?」
冒険者に問う。
「お前らみたいな人間にウロチョロされると気が散るんだよ。ダンジョン体験したいだけなら十階層までで我慢してろ」
「さすがにそういうわけには……」
苦笑。
「クエストを受注しました故」
「何のクエストだ?」
「多分目的は一緒じゃないかなぁ?」
「白金のオレイカルコス採取か?」
「それ」
「大概口閉じないと殺すぞ」
「まぁまぁ」
僕はハンズアップして気を逸らす。
「穏便に行こうよ」
「お前らがそのまま帰ればな」
「それは無し」
「じゃあ死ね」
躊躇いなく冒険者は手に持った剣を振るった。
タァンと銃声。
当然ツナデ。
冒険者の肩を撃ち抜いたのだ。
剣は握りが甘くなり地面へ。
冒険者の仲間が殺気立つが、ツナデのハンドカノンの銃口が向けられると未知の恐怖に気後れしたようだった。
「何を……!?」
「説明する気にもならないね」
ぼんやりと僕。
「よく殺さなかったね?」
とは僕からツナデ。
「死者は塵芥ですけど負傷者は荷物ですから」
ツナデらしい判断だった。
仲間を放っておけるはずもなく絡んできた冒険者パーティは負傷者の手当にかかりきりとなる。
要するに足が止まったのだ。
「じゃ、いこっか」
「ウーニャー!」
ウーニャーが尻尾ペシペシ。
そんなわけでダンジョン攻略を再開。
時折モンスターと接触する。
その全てをツナデが処理した。
まさかダンジョンの方も拳銃が使用されるとは想定もしていないだろう。
至極当たり前の話だが。
さて、
「ウーニャー」
あまりウーニャーの出番もなかった。
一応冒険者の数もそれなりなので自重だ。
別に恨まれても返り討ちくらいは出来るけど、さりとて面倒事は嫌いでもある。
これはフォトンにも通じる。
というかはた迷惑さで云えば、直線的なドラゴンブレスを放つウーニャーより範囲制圧型の大規模魔術を行使するフォトンの方が上。
おそらくフォトンの魔術でもダンジョンは破壊できないだろうけど、その分の破壊エネルギーは階層丸ごと満たすこと自明だ。
最終手段としておこう。
そんなわけで急ぐでもなく軽やかな足取りで僕らはダンジョンを攻略していった。
尚オーラで大方の範囲は認知出来るため道に迷うこともない。
反則だ。
が、特にオーラ禁止とのお触れも出ていないため構わない案件だろう。
「ギシャア!」
とゴブリンが襲う。
「…………」
銃声。
無慈悲に撃ち殺される。
ドロップアイテムを残して地面に解けるように消えていく。
拾うこともせずに階下へ。
モンスターはダンジョンの壁や床から産まれ、死ねば床に吸収されるらしい。
まぁ仮に死体が残ったら腐敗臭で居ていられない惨状になろうけど。
色々と考えられてるんだなぁ。
そろそろと攻略。
「お兄様」
とツナデ。
「何でっしゃろ?」
「褒めてください」
「あいあい」
クシャッと髪を撫でてやる。
「いい子いい子」