鉄の国04
「ふと思いついたんだけど」
薬効煙を嗜みながら僕は言う。
「百年前の聖剣を使い回しは出来ないの?」
「可不可なら可能でしょうが正当性がありません。なにより王子イオル様がいなければ繁栄祭が行なわれません故」
「この際一人の犠牲はしょうがないって」
ヒラヒラと手を振る。
別段イオルだけが王族でもないだろう。
「なんなら魔術で白金のオレイカルコスを再現すれば?」
「それもまた義に反します」
「融通がきかないなぁ」
「そういう問題でしょうか?」
アイゼンのこめかみが引きつっていた。
「では受けてもらえないと?」
「んにゃ?」
煙を吐く。
愉悦だ。
「元々ダンジョンには挑むつもりだったし。都合の良いクエストでも受けようかとギルド支部に行ったりしたしね。王族の依頼なら莫大な恩を笠に着られるでしょ?」
「それはもう」
「なら考えるまでもない」
「有り難い」
アイゼンは深々と頭を下げた。
「まぁ娯楽のついでだから然程感謝されることでもないけどねぇ」
プカー。
それから少し話を煮詰めて今日は就寝と相成った。
「ウーニャー」
と腕の中のウーニャー。
「案外パパは付き合い良いよね」
「根っからの善人だから」
「ウーニャー」
ツッコんでくれないらしい。
それとも肯定したのだろうか?
「ダンジョンって楽しいの?」
「さあ?」
僕とて初体験だ。
何もかもが暗中模索。
大火に手を突っ込むくらいは覚悟している。
もっともフォトンがいれば幾らでも取り返せるだろうけど。
そういう意味ではある種のズルではある。
そこにウーニャーとフィリアがいればもはや世界征服も夢では無い。
面倒だからしないけど。
「ウーニャーのブレスで最下層まで穴を開けようか?」
「その手もあるね」
裏技だ。
フィリアも似たようなことが出来る。
「けど」
それもなんだかね。
無粋と言えばこの上なく無粋。
一応観光旅行だから国を楽しむのが第一義。
王子救出は二の次だ。
「しかし……」
嘆息。
「オレイカルコスね……」
「知ってるの?」
「伝説の金属」
僕の世界ではね。
俗説として銅の複合金属らしいけどアトランティスがどうのこうの。
とはいえこちらでは違うのだろう。
伝説の金属。
なお鍛冶師曰く、
「聖剣の材料」
とも。
この場合の聖剣が祭儀用を指すのか威力的な伝説の武器を指すのか。
ソレは知らない。
けれども何も無いのなら鉄で代用できるはずだ。
オリハルコン……オレイカルコスが必要と言うからには神秘的な剣であって欲しい少年心だった。
「ウーニャー……」
とウーニャーも頷く。
何はともあれ暇はしそうにない。
なら楽しむのが義務だろう。
ダンジョンかぁ。
「とうとうここまで来たか」
と言った感じ。
とりあえずは目を瞑る。
時間は切迫しているらしい。
けれども別に睡眠程度は間があるだろう。
「ウーニャー」
「ウーニャー?」
「明日は頑張ろうね」
「パパと一緒なら何処とでも」
可愛いなぁ。
ロリコンのケはありませんけれども。
それっぱかりは主張せねばならない。
基本的に無害です。
ホテルに泊まる場合はウーニャーとにしてるけど、
「なんせヒロインたちは肉食系女子ですから」
と肩をすくめたいほど哀しい現実がある。
合掌したい気分。
というか何度か天に合掌した。
大神様は応えなかったけど。
ま、期待もしてないんだけどにゃ~。