武の国30
「魔術?」
とは織姫。
場所は団子茶屋。
御前試合で優勝こそしたものの、
「まぁねぇ」
としか言えない僕。
立身出世にはまるで興味が無いのだ。
で、金銭を得て、
「はいお終い」
と為ったところで織姫から茶の誘いがあった。
武の国で最強を謳ったのだ。
護衛としては十分だろう。
団子をアグリ。
「でも世界宣言は……」
と織姫。
嘆息。
「良く思いだしてみて」
決勝戦での武士の言葉だ。
武士はこう言ったのだ。
「天に星よ、地に土よ、人の六根を祝福したまえ。六波羅流にて参る」
などと。
「それが?」
「地に土よ……が属性指定でしょ?」
「むぅ」
「で……六根を祝福したまえ……が世界宣言」
「なるほど」
「結果として肉体強化の魔術による所産だよ」
そういうことなのだ。
「では不正を働いていたと?」
「他に解釈がある?」
「マサムネは?」
「世界宣言なんてしてないでしょ?」
その通りだ。
「だが身体強化の魔術師と五分に渡り合う肉体能力は何処から……」
あ。
そゆ話ね。
「元々の才の違い」
異論は認めない。
団子をアグリ。
「才と来たか」
「他に説明も出来ないしね」
肩をすくめる。
元々の身体能力が常人の数倍。
それを訓練でリミッターを掛けている現状だ。
別段リミッターを常時解き放っても良いのだけど、
「特に意味が無い」
という結論である。
結果、こう云ったことが無いとリミッターを解くに値しない。
団子をアグリ。
茶を飲む。
「では不正すらも押しのけて勝ったというのかや?」
「口幅ったいながら」
茶をズズズ。
「そなたなら天の頂にも届きそうだが……」
「興味が無い」
心底から。
本音で答える。
「鬼かの?」
「人外という意味ではね」
苦笑を誘われた。
「お兄様は最強ですので」
ツナデがふんすと胸を張る。
「であるからマサムネ様を私が召喚したのですけど」
フォトンまで自慢げだ。
「恥ずかしいから止めて」
僕は嘆息。
この世界に来てから何度目でしょう?
とりあえず薬効煙をくわえる。
魔術で火を点けて煙を味わう。
「ウーニャー」
とウーニャー。
尻尾ペシペシ。
「とりあえずフォトンの要望は聞き届けたよね?」
「だぁね」
「お疲れ様でした」
フォトンが慇懃に一礼する。
「では次の国だね!」
イナフが興奮して言った。
「お姉さんがフォローできる国なら良いんですけど」
まぁ武の国が例外ってだけだろうけど。
「マサムネ様が行く所が私の行く所ですので」
ジャンヌもそんな感じ。
「決勝戦の魔術師はどうするかや?」
「好きにしてちょ」
どうなろうと構わないのは事実だ。
「出来れば妾の近衛に為って欲しいのじゃが……」
「影だけ落としていきましょう」
クシャッと織姫の頭を撫でる。
「そなたを鬼神殺しとしよう」
「いいの?」
「大鬼殺しすら歯牙にかけなければ他にあるまい?」
「ご尤も」
苦笑せざるを得なかった。
「さて次の国は」
何処だろね?
観光旅行も大事だけどラセンの行方も気になる。
ブラッディレイン。
足跡程度は掴んだけどまだ遠い。
それからフォトンの業。
色々と考えることがありそうだ。
「…………」
僕はフーッと薬効煙の煙を吐いた。