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武の国29


 次の日。


 ついに御前試合の決勝戦。


 陣はいつもより広く取られ、観客も数倍増し。


 僕は和服を着て野太刀を握っていた。


 対峙する武士は年齢的にあまり差異が無い。


 僕がそうなのだから別段人に言えた話でもないのだけど。


 ただ不可思議ではあった。


 オーラによる検分。


 体は造られている。


 が、予想より練られていない。


 くじ運もあったのだろうか?


 そんなことを思う。


 一応大鬼殺しに相応しい身体能力の持ち主ではあるが、オーラで見ると若干頼りない。


 スッと木刀を構える。


 蜻蛉の構え。


 隙は無かった。


 勢圏は制圧しているし集中も大した物だ。


 大鬼殺しに異論は無い。


 が、


「何かが足りない」


 それが僕をして困惑させる。


 一応大鬼殺しとしての性能は持っているが今一つ及ばないというか。


 先にも言ったが体は造られていても練られていない。


 率直に言って、


「よく決勝に残れたな」


 である。


 ケチを付けたところでこちらに勝ちが転がり込んでくるわけでもないので黙ってるけど……さ。


 相手は先述したように蜻蛉の構え。


 袈裟切り一択。


 対して僕は無構え。


 やはりこれが一番しっくりくる。


 覚悟完了。


 それを察した審判が尋ねる。


「両者宜しいか?」


 無言で頷く。


「では始め!」


 合図は簡略。


 ドクンと僕の中の血管が脈打った。


 アドレナリンの供給。


 それも最大限。


 対する武士は刀をギリッと強く握って言を放った。


「天に星よ、地に土よ、人の六根を祝福したまえ。六波羅流にて参る!」


「っ!」


 そこで覚った。


 さらにドクンと血管が脈打つ。


 思考加速を最大限。


 かつ身体リミッターを完全解除。


 世界の流れが三倍遅くなり、僕の身体能力が三倍鋭くなる。


 武士の身体が残像を残して消えた。


 凄まじい身体能力だ。


 本人は背後。


 僕は回転して野太刀を振るう。


 木刀とかちあって弾かれる。


 さらに武士は疾駆。


 速度で云えば神速。


 目にもとまらぬ速さ。


 こちらとしても応対する以上の剣技が通じない。


 客の認識の枠外にて丁々発止が行なわれる。


 もはやそれは立ち合いでは無く、


「――っ!」


「――疾!」


 速度の競い合いだった。


 神速の剣が五度振るわれる。


 それらを僕は全て弾く。


「ふ!」


 こちらから剣を振るうと鍔迫り合いを避けて後退する。


 波剣については対策を練ったらしい。


 こっちとしてはどうでもいいけど。


 それから僕は防戦に徹した。


 相手方の攻撃は鋭くは有る物の時間の経過と共に焦りが剣筋に乗る。


 至極単純な話だ。


「魔術は永続しない」


 そんな理屈。


 発生魔術ならともあれ維持魔術なら相応だ。


 なるほど。


 大鬼殺しを下せるはずである。


 魔術による身体強化。


 なお武の国とも為れば相応のイメージは範疇だろう。


 なので、


「…………」


「――――」


 僕は飄々と。


 武士は憤然と。


 それぞれ剣を振るった。


 丁々発止の後に、


「――っ!」


 ガクンと武士の身体能力が落ちる。


 無論のこと見逃す僕でもない。


「天に星よ――!」


 遅い。


 瞬時に間合いを詰める。


 木製の野太刀が武士の喉元に突き刺さった。


 刺突。


 最速にして最凶の剣技。


「が――!」


 魔術の起動を阻害されて武士は呻いた。


 そのこめかみに野太刀を埋め込む。


 意識を手放させるのに時間は要らなかった。


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