武の国28
とりあえず風呂に入ることになった。
「ふい」
と嘆息。
「ウーニャー」
とウーニャーも嘆息。
で、
「マサムネ様」
「お兄様」
「お兄ちゃん」
「マサムネちゃん」
「マサムネ様」
ヒロインたちの頭の悪さも極まっていた。
何処で道を踏み外したのだろう?
ソレは世界の七不思議。
いいんだけどさ。
「マサムネちゃん?」
フィリアがススッと寄ってくる。
一番豊満な肉体の持ち主だ。
水着は着ているが脂肪が湯面に浮いている。
「何でしょ?」
「お姉さんの体を好きにしたいと思わない?」
「思うよ」
別段不能では無い。
女性の体に興味が無いわけもない。
ただ単純に、
「面倒くさい」
に締めくくられる。
色々とこっちも考えてはいるのだ。
フォトンだったり。
あるいはツナデだったり。
その業とこの世界での再認。
そんな感じのことを。
「マサムネちゃんは優しすぎるわ」
「光栄だね」
済まして云う。
肩まで湯に浸かった。
「お兄ちゃん?」
今度はイナフだ。
「イナフも?」
「駄目?」
「勿体ないという感情はあるよ」
「お兄ちゃんになら……いいよ?」
「全国の義妹好きには垂涎物ですな」
はっはっは。
「?」
とイナフ。
説明するのも面倒だ。
「二人とも僕に構わなければ選り取り見取りだろうに」
「あう」
イナフは気圧されて、
「そうねぇ」
フィリアは思案した。
「でもイナフは耳無しだから」
「別に構わないんじゃない?」
「そう云ってくれるお兄ちゃんが好き」
恐縮です。
「フィリアは?」
「一目惚れに理由がいるの?」
「…………」
そういえばそうだったね。
カクンと首が垂れ下がった。
「趣味が悪い」
言い慣れた言葉。
別にフィリアだけではない。
他のヒロインにも云える。
「何で僕なんだ?」
と。
返ってくるのは、
「格好良い」
とか、
「優しい」
とか、
「誠実だ」
とか、
「紳士だから」
とか。
そんな感じだ。
「ウーニャー!」
と竜化したウーニャーが僕の頭に乗る。
尻尾ペシペシ。
「パパは魅力的だからしょうがない!」
ウーニャーの場合はインプリンティングなんだけど。
「…………」
言って詮方なき……か。
分かってはいる。
「何時かはきっと」
そんな感じに。
「お兄様?」
僕の味方が困惑を瞳に宿して尋ねてきた。
「なにか気を患うことが?」
「ハーレム主人公の大変さを実感した感じ」
イナフとフィリアの頭を撫でながら苦笑。
「ツナデは何時までもお兄様の味方ですから」
「有り難い」
嘘では無い。
真実の言葉かは……まぁ今後次第。
乙女に思うところが有るように、こっちはこっちで思うことが有る。
であれば、
「南無阿弥陀仏」
そう仏に祈るほかなかったけど。
こっちの大神に興味は無い。
別に不信心でも魔術を使えるのだからこと敬意とは無関係な状況だ。
問題があるならラセンの方だろう。