武の国27
「良きかな良きかな」
織姫は御機嫌だった。
「そなたは強いのぅ」
ちなみに謁見の間では無く食堂だ。
いつものメンツと織姫。
以上。
「妾の側近にならぬかや?」
「謹んでごめんなさい」
「しかし優勝すれば自然とそうなるが?」
「金銭でも貰えれば十分だね」
「そもそもマサムネ様は私のモノですから」
「お兄様はツナデのモノです」
「イナフの!」
「ウーニャー!」
疲れるなぁ……。
何時ものことではあるけど。
和食をもむもむ。
やはり米こそ至高。
「明日の決勝はどう臨む気かや?」
「別段普通に」
他に言い様もない。
魔術も遁術も使えないなら正攻法で叩きのめす程度しか作戦はないだろう。
あるいは毒を盛ったり事前に強襲して不利な状況を作ることも戦術ではあろうけど、ルールに反するなら従うほか無い。
白米艶々。
「百人切りも大鬼殺しかの」
「今更ですね」
フォトンが苦笑した。
「鬼神も殺せそうですけど」
とツナデ。
神様はねぇ。
殺す殺さないの次元かな?
食事を終えて茶を飲む。
「歩」
と吐息。
薫り高い玉露だった。
「相手方も相応ぞ?」
これは織姫。
「強いの?」
「単純な数値で見ればマサムネにも劣らんの」
「はあ」
と僕。
ぼんやりと頷いて茶を飲む。
「ウーニャー!」
とウーニャーが尻尾ペシペシ。
「パパより強い人間は有り得ない!」
信頼は有り難いけど、
「その根拠は何処から?」
と問いたい。
根拠と云うより信頼や信仰と云った類だろうけど。
「ありがとね」
ウーニャーに感謝。
「ウーニャー!」
ウーニャーは嬉しそうだ。
尻尾ペシペシ。
「しかしな」
織姫は懸念を覚えたらしい。
「相手方にも通ずる理屈ぞ」
そこに異論は無い。
だから何だ。
そう云いたいけど。
「魔術と遁術は使ってはいけないんですか?」
これはジャンヌ。
「一応武の国は剣の腕が強さの証故な」
「お姉さんが援護すれば優勝は貰ったも同然なのになぁ」
フィリアが物騒なことを云う。
まぁトライデントのフォローがあるなら一騎当千という言葉でも追いつかない援護ではあろうけどもさ……。
反則は反則。
「まぁ悔いが残らないように精一杯やるよ」
僕は茶を飲み干すと想像創造。
後に世界宣言。
薬効煙を生みだしくわえ、魔術で火を点ける。
「…………」
煙を吸って吐いた。
「ほにゃら」
と脱力。
「それは妾にも吸えるかや?」
「まぁ体に良い薬ではあるね」
苦笑。
そして紙箱を投げ渡す。
薬効煙だ。
トランプと等しく異世界で興味を持たれる物。
「…………」
煙を吸う。
フーッと吐いた。
大気に攪拌して消える。
「体に」
とは織姫。
「ところでマサムネちゃん?」
「何でしょう?」
「今日はお姉さんとお風呂に入らない?」
「男女別でしょ」
「ウーニャーちゃんばかりズルくない?」
「ズルいです」
ジャンヌまで抗議してきた。
頭の頭痛が痛い。
元よりヒロインたちの気質は知っていたつもりだけど。
「なんだかなぁ」
そんな感想。