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魔の国10

 そして次の日。


 僕とフォトンはあてがわれた魔の国の王城の一部屋で目を覚ました。


「マサムネ様……」


 と熱っぽく瞳を揺らしてフォトンは僕に抱きついてくる。


 下着姿のままで。


 僕はといえばそんなフォトンのされるがままだ。


 別に僕はフォトンに慕情を寄せてなんていないものの跳ね除けるのも面倒なので好きにさせている。


「キス……してくださいませんか?」


 フォトンが僕を求めてくる。


「…………」


 僕はフォトンに無言でキスをした。


 フォトンの唇と僕の唇が重ね合わされ、そしてフォトンの舌と僕の舌とが絡み合って互いの口内を凌辱する。


 そうやってディープキスを終えると、唾液の糸を引いて僕とフォトンはコツンと額に額をぶつける。


「好きです……マサムネ様……」


「僕は別に……だね」


「はい。今はそれでいいです」


 物わかりが良くて助かるね。


「コホン」


 と咳ばらいが聞こえてきた。


 僕のモノではない。


 フォトンのものでもない。


 気付けば使用人が扉を開けて対応に苦慮していた。


「申し訳ありません……フォトン様……マサムネ様……お邪魔であることは存じ上げておりますが失礼します。陛下がお呼びです」


「バミューダ王が?」


「はい」


 首肯する使用人さん。


 そして僕とフォトンはスーツに着替えて使用人に導かれるままに食事の間へと案内されるのだった。


 待っていたのはバミューダ王である。


「おお。熟睡できたかな? 心地よければ遇した甲斐があるというものだが……」


 そんな挨拶代りの言葉に、


「お陰様で」


「ありがとうございます」


 僕とフォトンは同義の言葉を口にした。


 そしてバミューダ王を問いただす。


 役を買って出たのはフォトンだ。


「それで……如何様な理由で私たちを呼んだのです?」


「なに。そう身構えることもない」


 カラカラとバミューダ王は笑う。


「一緒に朝食をとろう。ただそれだけだ」


「それは構いませんが」


 フォトンはそう言って長テーブルの下座に着いた。


 僕も同様に下座に着く。


「ああ、そう云う遠慮は止めてくれないか?」


 バミューダ王は手招きをする。


「上座に座ってくれ」


「それでは王としての沽券にかかわりますよ?」


「なに。王など王冠を被り玉座に座れば誰でもできる。実質的な執務は宰相がしてくれるからな。そんな大した存在じゃない」


 屈託のないバミューダ王の言葉に、


「…………」


「…………」


 言葉を返せない僕とフォトン。


「それよりも自らの力を開拓しセブンゾールとなったフォトン様の方がよっぽど価値がある。本来なら私こそ下座に座るべきだ」


「滅相もありません」


「そういうと思った。だから上座に座っているのだよ」


 くつくつと笑うバミューダ王。


 そして僕とフォトンとバミューダ王は三人で朝食を開始した。


 焼き立ての香り高いパンに豆のスープ……それからサラダ。


 王の食事としては質素だが、バミューダ王が言うに自身がそういう希望を厨房に伝えているらしい。


「寝起きに重いモノを食わされてもな」


 とのこと。


 そうして軽食を食べ終えて、紅茶で一服すると、フォトンはバミューダ王に問いかけた。


「ところでバミューダ陛下……」


「なんだ?」


「ブラッディレインがこの国に現れたりはしていませんか?」


「ないな」


 バミューダ王ははっきり言った。


「金貨四十枚の賞金首だ。この国で不貞をはたらけば私の耳に入る。少なくともこの国にはいないはずだ」


「そうですか……」


 紅茶を一口。


「フォトン様はブラッディレインを探しておられるのか?」


「ええ、まぁ。観光旅行のついで……ですけど」


「賞金目当て……というわけでもなさそうだな」


「詮索は野暮でございます」


「これは失礼した」


 苦笑される。


 紅茶を一口。


「なんなら我が国の総力をあげてブラッディレインを捜索させようか?」


「おやめください。死体の山が積み上がるだけです」


「しかしてフォトン様はブラッディレインを探しているのでは?」


「ですから……それはこちらの問題です」


「ふむ。失礼した」


「ところで破却のクランゼのことですが……」


「そちらは任せよ。午前中には城に顔を出すように命令してある」


「骨折り……ありがとうございます」


「なに。フォトン様のために一肌脱げるのならこれに勝るはありませんよ」


 そう言ってバミューダ王はカラカラと笑う。


 紅茶を一口。

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