武の国24
「波剣?」
「です」
そんな言葉。
とりあえず予選は突破。
明日は準決勝。
で、織姫に呼ばれて御前に着く。
尋ねられた問いに僕は、
「波剣」
と答えた。
「どういう理屈じゃ?」
然程でもないんだけどね。
苦笑。
せざるを得ないだろう。
「刀に勁を乗せただけだよ」
「けい……」
「です」
頷く。
「要するに」
僕は謁見の間の柱の一つに歩み寄る。
そしてスッと柱に手を添えて、
「っ!」
勁を練る。
次の瞬間、柱はミシィと音を立てて粉砕された。
「――っ!」
織姫は驚愕する。
「これが勁を練ると云うことだね」
肩をすくめる。
「で、波剣は……」
あー。
何と言うべきか。
「この勁に宿った衝撃を刀にも適応させて対象物を粉砕させると言ったところ…………なのかな?」
「それで敵の木刀を?」
「ですです」
破顔。
「大鬼殺しより強いのかや?」
「弱いとは云わなかったはずだけど」
そういうことだ。
「ふむ」
織姫は何やら考えている様子だ。
「それは誰でも出来るので?」
「修練を積めばね」
何事にも下積みは必要だ。
「指導したりは……」
「生憎其処まで暇じゃない」
「妾の専属にしてやろうぞ」
「謹んでごめんなさい」
他に言い様もない。
「むぅ」
と織姫。
「あまり褒められた趣味でもありませんね」
肩をすくめる。
大仰に。
ハリウッド俳優もかくやな感じで。
「お主は楽しんでおらぬのか?」
「側面が有るのは否定しませんよ」
苦笑した。
その通りだ。
「強い侍と戦う」
そのことに高ぶる気持ちはある。
剣が全てでは無いけど、
「剣にて互角を演じれる」
人間の存在は希少だ。
ツナデやイナフとはまた違う。
コテツは役者が不足している。
そういうことでは良い機会ではある。
もちろん、
「面倒くさい」
も本音ではあるけどね。
「波剣かやぁ」
織姫はぼんやりとしていた。
粉砕された柱に目をやっている。
まぁ僕としては今更なんだけど。
「…………」
想像創造。
世界宣言。
薬効煙を生みだして火を点ける。
「失礼」
と云って、
「…………」
煙を吸って吐く。
「ウーニャー」
頭に乗っかっているウーニャーが尻尾ペシペシ。
何時もの光景だ。
「その業を教授願いたいのだが」
「オススメはしません」
「何故じゃ?」
「人を傷つける以外の能力ではありませんし」
薬効を吸って吐く。
心が安らいだ。
「では何故きさんは覚えている?」
「人を殺す必要があったからですな」
その通りなのだからしょうがない。
「むぅ」
呻かれたところで何も変わらない。
別段勁の剣に対する適応……波剣に特許を取っているわけでもないけど、無いにこしたことはないのもまた事実だ。
「各々が僕の剣を見て覚えるのならソレについては知らないけどね」
「マサムネ様」
「お兄様」
フォトンとツナデは言う。
「人が良い」
と。
この二人は僕を良く見透かすのだ。
南無三宝。