武の国20
そんなこんなで道を通り村を通り首都へ。
天守閣が見える景色だった。
さすが武の国といったところ。
市場も賑わいを見せ、流動性は限りなく高い。
ついて即座に、
「百人切り。お相手仕る」
いきなり刀を抜いて襲いかかってくる武者一人。
「…………はぁ」
嘆息。
鞘ごと抜いて刀を受け止め反撃で脳天唐竹割り。
「ぶっ!」
と衝撃にむせて昏倒させる。
全て一瞬の間だ。
別段誇ることでもないけど。
「で、御前試合ね」
鞘に収めたままの野太刀を腰に再度差して後頭部を掻く。
「ウーニャー!」
尻尾ペシペシ。
「とりあえずマサムネ様のエントリーで予定が滞っていますので、顔を見せては貰えませんか?」
「別に予定が滞っているのはお兄様のせいではないでしょう?」
ツナデは不満げだ。
「その通りです」
案内の武士も頷く。
「こちらの気紛れによる弊害です。ですが協力的に動いて貰えれば事態が速く進むのも事実。そう受け取っては貰えませんか?」
「詭弁です」
「大丈夫」
僕はツナデの髪を撫でた。
「もうちょっと器を大きくしよう」
「お兄様のことに関しては狭量にならざるを得ません」
だろうけどさ。
とりあえず天守閣へ。
マサムネの似顔絵は大陸中にばらまかれているため顔自体は割れている。
入城もシャンシャンで通った。
嬉しくないなぁ。
面会は織姫。
黒く艶やかな髪に同色の瞳。
髪は長く畳にまで及び、十二単を纏っている。
なんとなくツナデとキャラ被ってるね。
いいんだけど。
「ほう」
と織姫。
「そなたが百人切りかや?」
「です」
てきとーに答える。
コテツ以外はリラックスしていた。
コテツは愛らしいマスクを青く染めて縦筋を引いている。
まぁ自国の王女と面会すればこうなるものか……な?
あまり縁の無い感情だ。
「これで八人揃うたな」
「であります」
案内の武士さんが首肯する。
「八人?」
とはイナフ。
「お兄ちゃんを含めて?」
「ええ」
肯定。
「少なくない?」
「いえ。御前試合としては例に無い多数ですが」
「そなの?」
イナフは気安く織姫に問う。
「そんな何十人も大鬼殺しが居るのなら武の国は大陸を制覇しておるよ」
ごもっとも。
大鬼。
亜人。
それを刀一本かつ単独で弑できる存在。
そんな連中で一個大隊を造れれば、特級戦力と言えるだろう。
「とりあえず顔見せも為った」
とは織姫の言葉。
「妾に剣を捧げてくれるかや?」
「御前試合には参加しますが……」
「君主として妾では不足か」
「まぁ可愛い子ならこれだけいますので」
フォトンにツナデ、イナフにウーニャー、フィリアにジャンヌ。
ちなみに現地妻まで数えるともう少し増える。
「不快な話じゃの」
「それは失礼」
一礼する。
「御前試合の準備はどうなっておる?」
と織姫は使用人に問うた。
「マサムネ様がいらっしゃったため明日にでも」
「ではそうしよう」
織姫は頷いた。
「よろしいか?」
「問題は無いけどね。懸念が一つ」
「云うてみよ」
「大鬼殺しは武の国の貴重な戦力でしょ」
「然りじゃ」
「数を減らして良いの?」
相手をするなら殺す。
そう云ったのだ。
「大丈夫じゃ。御前試合では木刀しか認められておらん。無論大鬼殺しが持てば立派な凶器ではあるが百人切りなら問題なかろう」
そういう信頼のされ方はどうだろう?
いいんだけどさ。
別に。




