武の国19
特訓。
後の食事。
後の風呂。
当然トライデントのお世話になりました。
「マサムネ様」
「お兄様」
ニコッと笑うフォトンとツナデ。
「甘えん坊だね二人とも」
「マサムネ様ですから」
「以下同文」
「優しさは人間としての強さだから制限が要らないのも必然ではあるけど」
「抱いて良いんですよ?」
「まずはツナデからです」
「なんだかなぁ」
困惑。
「ウーニャー!」
ウーニャーが抱きついてきた。
これもまたいつも通り。
「マサムネ様? 私も都合よく使ってくれて構いませんよ?」
ジャンヌまで気の違えたことを言ってくる。
「大切にしたいから仲間だよ」
仲で間。
字面だけ見ると空間的な空白さを感じる熟語だけど。
「ウーニャー?」
あんまり影響して欲しくないんだけど。
ウーニャーには。
「お兄ちゃんはキープ魔神?」
「はっはっは」
「お姉さんなら筆下ろしもカモンなのだけどね」
ていうか誰かを選べば血祭りにされるんじゃなかろうか?
そんな気がする今日この頃。
「師匠は気宇壮大であります」
意味違うからソレ。
単なるヘタレです。
「そうなのでありますか?」
「なのであります」
コクコクと頷く僕とヒロインたち。
そこで同意されると僕の立つ瀬が無いんだけど……今更だね。
ていうかどこで道を間違えた?
最初はフォトンと二人旅だったはずなんだけど。
で、ラセンを追っかけて国々を観光している内に尾ひれのように長々と。
いいんだけどさ別に。
「お兄様?」
「何でっしゃろ?」
「キスしてください」
あいあい。
ほっぺにキス。
「むぅ」
「唇にしてもいいけど、入浴中はトライデントの刃先三寸で脅されてると取った方が良いよ?」
「むぅ」
理解は得られたらしい。
「私にも!」
これはフォトン。
「ウーニャーも!」
言わずもがな。
「サービスだからね?」
そんな感じ。
なんだか変な空気になったね。
僕としてはラセンについて考察したかったんだけど。
そういうと、
「師匠ですか?」
とフォトン。
それです。
「似てない?」
「誰にでしょう?」
気づいてないらしい。
いいんだけど。
「とりあえずラセンが近くに居るのは確かだろうけど……」
「魔術の行使が無ければですが」
「それなんだよね~」
空間転移は僕が使えるくらいだ。
ラセンが出来ても不思議では無い。
というより無いと不便だろう。
虐殺の象徴。
血の雨。
故に付いた二つ名が、
「ブラッディレイン」
であるのだから。
その上で無限復元持ちともなれば何をかいわんや。
魔術の冴えも人一倍らしいし。
この辺の折り合いをフォトンも身につければもう少し楽になるのだけど……ソレは言ってもしょうがない。
まさか魔術の試し打ちをさせるわけにも行かないしね。
冗談じゃなく文明に弊害が起きる。
ていうか思うほどにデミウルゴスの管理が気にかかるのだけどどうだろう?
「うーん。巫女に聞くのも一つかな?」
ゴッドゲイザー。
神の巫女。
大神デミウルゴスを観測して決定づけた異世界の製作者にして神の代理。
その正体が女子高生だってんだから世の中は不条理だ。
「とりあえずは……」
「ツナデとエッチですか?」
「違う」
「私と?」
「イナフと?」
「お姉さんと?」
「私とでしょうか?」
「お師匠様が求めるなら」
なんかもう死んじゃおっかな。
それがヒロインたちにとっての最大級の皮肉に思えてきた。
もっとも無限復元が許さないだろうけど。
世の中上手く出来ている……というのはラセンに失礼かもだけど。