武の国12
都市にも夜は来る。
元が地球であるため必然だ。
僕はイナフと相対していた。
他のヒロインは見学に回っている。
「では」
姿勢を低くするイナフ。
「いきます」
間合いを詰めてくる。
超高速。
こっちからも踏み込んだ。
一手刀に一足刀。
フェイントと足捌きの連続性による裂帛のやりとり。
イナフの手刀を受け流す。
クルリと片手を回す。
合気。
柔ら。
力を受け流して利用。
その流れにイナフは乗った。
放り投げられても体勢を崩さない。
「さすが」
体術に於いてはツナデに切迫する。
着地。
同時に加速。
手刀が二つ。
捌く。
イナフの掌底を一本拳で打ち払う。
「っ!」
痛みに顔をしかめるイナフ。
が、遠慮はこの際失礼だ。
僕は身を低くして足払い。
イナフは跳躍でソレを避ける。
「疾!」
空中からの足蹴り。
横に体をずらして躱す。
着地と体制の整えが同時。
回し踵蹴り。
片手で防がれた。
更に回転。
回し蹴りを放つも後退して避けるイナフ。
というか僕が間合いを開けるためにやったことだけど。
仕切り直し。
手刀。
足刀。
振るわれ、振るい返す。
超高速のやりとり。
平手でイナフを襲う。
危険を感じたイナフが手刀で対応する。
その手刀を掴む。
「っ!」
悪手。
それを覚ったのだろう。
遅いけど。
「……っ」
困惑するイナフ。
僕は肉体に流れを作る。
濁流。
そう呼んで良い流れだった。
地面に叩き落とされるイナフ。
結果がわかっていたのだろう。
イナフの立て直しも速かった。
独楽のように回転して回し蹴り。
片足で止める。
この辺はしょうがない。
肉体の練度が基本的に違うのだ。
足刀。
避けられる。
間合いが広がった。
「さすがだね」
「お兄ちゃんに言われると皮肉に聞こえるから不思議」
「あー……」
一応本音なんだけど。
まぁ常時こっちが優勢なのも否定は出来ない。
それからは丁々発止。
手刀と足刀のやり合い。
躱す。
弾く。
当てる。
「ぐぅ……!」
呻くイナフの喉元に手刀を添える。
「こんな感じで良いかな?」
「参りました」
降参するイナフだった。
そしてパッと表情が華やぐ。
「やっぱりお兄ちゃんは強いね」
晴れやかな笑顔だ。
負けた悔しさより僕への尊崇が勝ったらしい。
「イナフも中々のものだよ」
僕も褒める。
「中々かぁ」
不満らしい。
褒めたつもりなんだけど。
リミッターを外していないため皮肉かも知れなかった。
ここで語る事でも無いけどね。
「ウーニャー!」
とウーニャー。
「何でそんなに強いの?」
「何でだろね?」
僕としてもソレが不思議だ。
そうであるためフォトンに呼ばれたんだろうけど。
いいんだけどさ。
別に。