武の国11
暇潰し。
今度はフィリアと都市を回った。
フィリアの手にはトライデント。
地上を支配する神器。
伝説に違わぬ神の持物だ。
風呂。
洗濯。
この程度なら許容の範囲内だ。
が、その気になれば何も無い空間から大津波を起こし、目に見える人間を干からびさせてミイラとし、氷の世界を造ることさえ造作も無い。
何ゆえフィリアがそんな神器を持っているのかは知らないけど、
「フォトンやウーニャーとタメを張れる」
程度には規格外。
そんなフィリアは肩にトライデントを預けて、
「マサムネちゃん」
と僕を呼ぶ。
陽気な声だ。
ルンと弾んでいる。
「どこか行きたいところは?」
僕が尋ねると、
「茶屋にでも」
と無難な提案。
そんなわけで茶屋に。
茶を飲んで団子を食べてホッと一息。
「マサムネちゃん?」
とフィリア。
「何でしょうか?」
と僕。
「マサムネちゃんはお姉さんをどう思う?」
「さてね」
はぐらかす。
「ウーニャー!」
ウーニャーが尻尾ペシペシ。
「答えろ」
と云うことだろう。
「色々と世話にはなってるよ」
他に言い様もない。
「結局そう云う事ね」
そう云う事です。
理解があるって有り難い。
団子をもむもむ。
茶で口直し。
「なんだかなぁ」
フィリアはそう云った。
「タイミングの問題よね」
苦笑と共に。
「まぁね」
僕は応じる。
その通りだ。
基本的に決定論に順ずるモノだったから。
「さすがのトライデントもそこまではしてくれないし」
「色々とね」
茶を飲む。
陽気でポカポカ。
風が吹いて足音がざわめく。
活気のある大通りを見物しながら僕は日向ぼっこ。
そこに、
「マサムネ!」
と声がかかる。
「何でしょう?」
今更だけどあえて聞く。
「俺と立ち合え!」
「階位は?」
「中鬼殺し」
「却下」
「何故だ?」
「相手にならない」
オーラで戦力を把握する。
一瞬で済む作業だ。
「調子に乗るな!」
刀を抜く武士さん。
問答無用。
そういうことらしい。
「フィリア」
「なぁにマサムネちゃん?」
「後よろしく」
「はいはい」
朗らかに笑ってフィリアはトライデントを繰る。
次の瞬間、武士の両足が凍結した。
人体はほぼ水分で出来ている。
であればトライデントの干渉対象だ。
別段あしらうことは出来るけど、
「ほ」
茶の時間を蔑ろにも出来ない。
結果としてフィリアの処断である。
我ながら丸くなったものだ。
特に、
「何がどうの」
というわけでもないけれども。
「お茶が美味しいね」
「マサムネちゃんとなら尚更ね」
フィリアは悪戯っぽく笑った。
「そゆところは加点対象」
「あら。ファインプレー?」
「だね」
茶を飲んで頷く。
「光栄かな?」
「大層なことで」
そんな感じ。
そしてまた茶の時間を楽しむ僕とフィリアだった。
ウーニャーも頭には乗ってるけれど。