武の国05
着いた村で一泊することになった。
温かい食事をとってのんびりする僕。
その隣で訓練。
コテツの……だ。
僕は頭にウーニャーを乗せて薬効煙を吸っている。
その視界内でコテツが素振りに励んでいた。
さすがに侍だけあって和刀の振り方に型はある。
理があり道がある。
階位は小鬼殺しとはいえ、小鬼に対抗できないのが一般人だ。
そう云う意味では特筆すべき戦力ではあろう。
僕らが異例なだけで。
筋トレと型の稽古。
それから組手。
相手はイナフ。
もっとも相手にならなかったけど。
道は長い。
「疾っ!」
と拳を振るうコテツ。
直線的すぎる。
平手で受け止めるイナフ。
一手。
合気。
クルリとコテツの体が回った。
「っ?」
困惑しながらも体勢を低くして対処する。
「っ!」
水平回し蹴り。
イナフはソレを蹴り上げた。
一手。
イナフが拳を放つ。
もう片方の足で迎撃するコテツ。
その足を掴んでクルリ。
一手。
正常に地面に二本足を付けるコテツだった。
目の前にはイナフ。
中指一本拳。
コテツは退くことで避ける。
間合いが開く。
イナフとしては仕切り直しのつもりだろう。
ゆったりと脱力。
対するコテツは筋肉をガチガチに固めていた。
「ソレが駄目」
僕が忠告する。
薬効煙を吸いながら。
「常に脱力。これが基本」
「と言われましても……」
「まぁね」
古人の糟粕。
そんな感じ。
「関節で動きが阻害されてるよ?」
イナフも容赦なかった。
「むぅ」
呻くコテツ。
「ほら。体を解して」
言われるがままにリラックスするコテツでした。
「リラックスリラックス」
「であります」
ほにゃらと筋肉を解す。
「その状態を維持して組手をするよ」
「であります」
型稽古。
僕が提案した。
ゆっくりと型をなぞる様に二人で組手をする。
「…………」
「…………」
終始イナフが優勢だったけど。
「師匠はどれだけですか」
そんなコテツ。
「まぁさながら武神ですね」
ツナデが飄々と。
あんまり嬉しくないなぁ。
本音だ。
「少しずつスピードを上げていくよ?」
「はいであります」
スッと一段階イナフの挙動が速くなる。
「……っ!」
受けに回るコテツ。
一段階。
もう一段階。
そんな感じで速度を徐々に上げていく。
手刀。
合気。
足刀。
柔ら。
タタンとステップを踏むようなイナフの足捌き。
最終的にコテツは捌ききれなくなった。
「疾っ!」
イナフがコテツの首に手刀を突きつける。
「…………っ!」
戦慄。
「今日はこれまでとしよっか」
イナフはそう言った。
「お教えいただきありがとうございます」
深々と礼をするコテツ。
「ウーニャー」
とウーニャー。
「コテツは弱いの?」
「いや。僕らが強すぎるだけ」
傲慢ではあるけど自負でもある。
一線の得にもならないんだけどね。
薬効煙をプカプカ。