武の国04
とりあえず御前試合には出るとして、
「何処でやってるの?」
「首都でありますね」
「馬でどれほど?」
「うーん?」
あんまり土地勘も無いらしい。
とりあえずは北に向かってるんだけど。
一応ギルドがあったので商人の馬車の護衛として乗っけて貰いパッカラパッカラ。
食事と宿は提供されるが金銭取引は無い。
金にも困っていないためこれはいいんだけどねん。
「商人さん?」
「馬で二週間と言ったところですかね」
先は長いなぁ。
急ぐ旅でも無いのだけど。
パッカラパッカラ。
僕は想像創造をして世界宣言。
「木を以て命ず。薬効煙」
そして薬効煙を口にくわえて、
「火を以て命ず。ファイヤー」
魔術で火を点ける。
煙を吸ってフーッと吐く。
「それは何ですか?」
と商人。
「薬です」
答える僕。
「アヘンの類ですかな?」
「そんな物騒なモノじゃないよ」
苦笑。
「本当に体に良いだけの薬」
というと殊更に怪しいけど。
「売ってはくれませなんだか?」
「ほい」
と紙箱ごと薬効煙を投げ渡す。
「幾らでしょう?」
「元手がかかってないからいらないよ」
「むぅ」
「別に何かを企んでるわけでもなし」
煙を吐く。
「では供給する食事を少し豪華にしましょう」
「ああ、それでいいよ」
プカプカ。
「ところで」
とこれはコテツへ。
「何でありますか?」
「武の国にも山賊は出るの?」
「不逞浪士の類はいますね」
「さいか」
「お兄様?」
「だね」
阿吽の呼吸。
「山賊ですか?」
商人が怯える。
「刀を持って道を睨んでいる人間が三人」
「敵いますか?」
「まぁこっちにも武士は居るし」
「某でありますか?」
自身の可愛い顔を指差すコテツ。
「不逞浪士の誅伐も武士の仕事」
「でありますが……」
自信なさげだった。
よくこれで大鬼に挑もうと思ったものだ。
頭に血が上った結果なのだろうけど。
そんなわけでパッカラパッカラ。
僕は印を結ぶと術名を発す。
「霧遁の術」
霧隠れ。
正しい意味での遁術。
濃霧が辺りを支配した。
コテツを除く。
ちなみに僕たち混成一個旅団はオーラの知覚が出来るためここには含まれない。
そんなこんなでポイントに。
「サクッと退治なさい」
僕が言うと、
「お師匠様が仰るなら」
とスラリとコテツは刀を抜く。
濃霧に困惑している不逞浪士三人。
何事も無く斬られた。
もっともコテツの気質か。
殺すには到ってないけど。
人に優しいコテツだった。
で、またパッカラパッカラ。
「不思議な術を使いになりますな」
商人の苦笑。
一理ある。
「まぁ反則技だね」
そこに異論は無い。
「これほどの腕を持つ護衛を金銭取引無しに引き受けて貰えるとは」
「お金には困っていませんし」
フォトンが破顔した。
「おや? お金持ちで?」
「ですね」
そんなツナデ。
フォトンとツナデが金銭を握っている。
その他はヒモだ。
僕も含めて。
とりあえずはそう。
次の村で宿にと言った感じ。