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武の国03


「武の国ではそれぞれ階位が有るのであります」


 馬車の中。


 パッカラパッカラ走る馬。


 その蹄の音を聞きながら僕はホケーッとしていた。


「一番下が人殺し」


「殺人犯って事?」


 僕の頭上のウーニャーが尋ねる。


「いえ。これは便宜上であります」


 まぁあまり響きの良い言葉ではないでありますが。


 そうコテツは苦笑した。


「人を殺せる能力の侍がこう呼ばれると言うことであります」


「そりゃ刀持ってりゃ殺せるでしょうけど……」


 イナフは呆れた。


「次の位が小鬼殺し。小鬼を殺せる戦力でありますな」


 オチがわかっちゃったな。


「中鬼殺し。大鬼殺し。鬼神殺し。それぞれの殺害能力を有した侍の階位であります」


「ふむ」


 とフィリア。


「ということは……マサムネ様は大鬼殺し?」


 ジャンヌが首を傾げる。


「魔術を使ったので測定不能であります」


 超振動兼超高熱刀を指しているのだろう。


 野太刀ではあるが一般的な『刀』ではない。


「で」


 とフォトン。


「コテツは大鬼殺しになろうと鬼の国へ?」


「然りであります」


「無謀」


 ボソリとイナフが呟いた。


「お命助けていただいたことには感謝しているであります」


「行き掛けの駄賃だね」


 ウーニャーが僕の意識を代弁した。


「武の国では鬼の国を修練場として実力を測る修行をするのです」


「煽られて入った奴が言うの?」


 何気にイナフが辛辣だ。


「コテツの階位は?」


「小鬼殺しであります」


「…………」


 僕は日向ぼっこをしていたためツッコまなかった。


「あまり脅威には感じないね」


 さっきから辛辣なイナフ。


「上と下が同数でもないのでしょうけど」


 とはジャンヌ。


「ですね」


 フォトンも同意した。


「ウーニャー! ウーニャーも大鬼殺せるよ?」


 魔術だろ。


 言葉にはせず意識でツッコむ。


「剣術では無理だけど!」


「では人殺しでありますな」


 どうにかならないのかな。


 その字面は。


「…………」


 とりあえずパッカラパッカラ。


 馬車は進む。


「大鬼殺しとも成れば武家を持つことができて大将軍閣下の近衛にも選ばれる位で……」


 斯く斯く然々。


 そんな感じ。


「師匠ならいけるはずであります」


「…………」


 ホケーッと日光浴。


「ではマサムネ様?」


 深緑のおさげを左右に振ってフォトンがニッコリ笑った。


 やな予感。


「御前試合に出てくださいな」


「何でよ?」


 意味がない。


 意義がない。


 理由も根拠も揃っていない。


「観光旅行なんですから国を楽しまないと」


 だからって白刃に命晒す必要があるのか。


「マサムネ様なら盛り上げられるのでは?」


 否定はしない。


「剣術にも覚えがあるらしいですし」


 真似事だけどね。


「マサムネ様の格好良いところが見たいです」


「ぐ」


 呻く。


 僕を慕って期待される。


 フォトンは何時だって僕の味方だった。


 その上でこの笑顔。


 卑怯にもほどがある。


「師匠?」


 男の娘もクリクリとした黒眼をこっちに向けてきた。


「まぁ文字通りの微力を尽くす程度なら」


 ブスッとしてそういう。


「お兄様……」


 ツナデは切なそうな声だった。


 理由はわかるけど知らない振り。


「ついでに師匠の剣を某に……」


「ツナデに勝てるようになったらね」


「むぅ」


 あんまり正々堂々は好きじゃないんだけど。


 可愛い女の子に期待されるとなぁ。


 旅が道連れとはよく言ったもので、


「浮世のしがらみか」


 諦めるのにも少ない労力だった。


 南無。


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