表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
305/512

武の国02


 コテツは木刀を正眼に構えた。


 対するイナフは木刀を二つに切り分けて、短刀の代わりとした。


 両手に木刀の成れの果てを握る。


 呼気一つ。


「ふ!」


 コテツが斬りかかる。


 木刀ではあるが固さは折り紙付き。


 型も堂々としている。


 お手本のような袈裟切りだった。


 ただしあまり練られていない。


 あっさり受け止めるイナフ。


 片手の短刀でコテツの袈裟切りを止め、もう片方の短刀でコテツの首を狙う。


 速度は申し分ない。


 軽々と受け止められた剣に迷っているコテツの首元に短刀をピタリと宛がった。


 これが真剣なら頸動脈をバッサリと切り裂いている。


「とまぁこういうわけ」


 僕は薬効煙を吸いながら苦笑する。


「別にコテツが弱いというわけじゃないけど……ちと僕らの混成一個旅団は規格外でね」


「むぅであります」


 負けを認める度量はあるらしい。


 悔しさとは別の問題であるからそれは良し。


「ちなみにイナフに勝てないようじゃツナデお姉ちゃんには勝てないし、お兄ちゃんには手も足も出ないよ?」


「師匠はどれだけ強いんです?」


「旅団では中間くらいかな?」


 制圧力は類を見ないけど基本的に化け物揃いである。


 僕とツナデとイナフは旅団の良心だろう。


 他が逝きすぎてるだけだ。


「魔術無しで……であります」


「なら文句なしのピカイチ」


 イナフが断言する。


 照れるね。


 どうも。


「師匠の剣を某に教えて欲しいであります!」


「まずはイナフに師事して。それからツナデに認められたら僕が指導してあげる」


「さりげに厄介事を押し付けましたね」


 ツナデの半眼。


 僕は煙をフーッと吐くと、


「今の肉体練度で僕の剣は扱えないから」


 そう云ってスーッと煙を吸う。


「むぅ。天剣でありますか……」


「本来ならベトコンよろしく樹林密林で扱う剣術なんだけどにゃー」


「とりあえず織姫様の御前試合に」


「断る」


「お師匠様~」


 困った子である。


「とにかくまずは体造り」


 ペシとチョップ。


 脳天に。


「体の構造を把握して角から鋭利さを取る」


「?」


「筋肉を自発的に促し最速を得る」


「?」


「神経系を網羅し、血流を操作する」


「?」


「そうすれば剣の術理は自然と身につく」


「?」


「要するに自分自身を知ると云うことだよワトソン君」


「自分自身を知る……」


 この場合は、


「アイデンティティ」


 ではなく、


「バイオフィードバック」


 の意味だ。


 身体操作。


 言ってしまえば四文字だけど、これを自覚すれば、


「どの瞬間のどの状況でどの様に体を動かせば最速か?」


 この答えが身につく。


 剣術と忍術の道は違うが、肉体行使における練度の深さは四肢を持つ人間である限り平等に備えることの出来る度合いでもある。


 剣術を知らないイナフが侍のコテツに勝てる道理だ。


 剣術に頼らず魔術にも頼らず。


 遁術には頼るけど、それが聞かない相手を敵とするにあたって肉体構造について思いを馳せる。


 故に僕はイナフを連れて観光旅行が出来るのであった。


 薬効煙を吸って吐く。


「なんなら御前試合にはコテツが出れば良い」


「無茶であります」


「清々しいね」


 苦笑。


「大鬼殺しの階級が覇を競いあう試合でありますから」


「大鬼殺し?」


 僕は視線をジャンヌに向けた。


 赤い瞳は、


「?」


 と困惑している。


 精通していないらしい。


 それについては後日の事とし、


「とりあえず風呂に入りますか」


「この村に温泉はないのでありますが」


「フィリアが居るから大丈夫」


「?」


 とコテツ。


 まぁそうなるよね。


 フィリアはいつも通りにお湯の立方体を作って風呂とした。


 水着に着替えて中に入る。


「あー……暖まる」


「魔術でありますか……」


 複雑そうなコテツであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ