鬼の国31
想像創造。
そして世界宣言。
「火と金を以て命ず」
手に握るイメージ。
「超振動兼超高熱刀」
振動と高熱を限界まで極めた野太刀が現われる。
振動が耳を打ち、高熱が空間を歪める。
「貴様! 侍ではないのか!」
「ですです」
どうやら僕らは武の国出身と捉えられていたらしい。
「お姉さんがどうにかしましょうか?」
そんなフィリアの言。
「ツナデに任せて貰っても良いんですけど……」
ツナデも同意見らしい。
「ま、コテツの教育上ここは僕が受け持つよ」
苦笑して新しい薬効煙をくわえ、太刀の熱で火を点ける。
「では」
すっとすり足。
一瞬で大鬼の懐に入る。
「鬼退治と参りますか」
言った瞬間に太刀は振り抜いている。
大鬼の腕が肩から切り離された。
「が、ああああああああっ!」
熱したナイフでバターを切るが如し。
超振動兼超高熱刀。
あらゆる物質の強度を無力化する野太刀である。
なお振り切る速度は雲耀。
電光にして石火。
疾風にして迅雷。
刹那よりも尚細い。
「面妖な!」
大鬼がほざく。
「さすがに亜人に言われるほど零落れてもいないけどね」
苦笑して巨体の足下に滑り込む。
足を切り裂く。
そのまま流れるように立ち上がって剣を振るう。
心臓。
肺。
首。
それぞれを焼き切ってのける。
「辞世の句は?」
「貴様が考えろ」
「委細承知」
野太刀で大鬼の頭部を両断する。
「人の世に、肩身の狭き、鬼の業。討伐さるる、定めなら、偏にソレは、人と変わらぬ」
そして此度、鬼の国の一角が崩れ落ちるのだった。
「な、何者?」
コテツは困惑していた。
「まぁ通りすがりの奇術師だね」
肩をすくめる僕。
特別奇をてらったつもりも無い。
普通に戦って普通に倒す。
まぁ野太刀は魔術の産物だけど。
そこは問題じゃない。
「雲耀の速さ……」
「おや」
理解はしているらしい。
「うちでは神速って云うんだけどね」
「神速……」
しきりに考え込むコテツ。
「師匠」
「何でっしゃろ?」
「師事しても?」
「侍とは縁遠いんだけど」
誓って嘘じゃない。
「しかしその剣速と野太刀を小刀のように操る清廉さ。見事と云うのはこのことであります」
何だかなぁ
コテツの瞳はキラキラ輝いていた。
男の娘ってこんなに可愛いのね。
そんなことを思う。
「代わりに提供できるのは……」
ううむ。
そう悩み、
「体を献上するくらいしか出来ないのでありますけど……」
「病気が怖い」
「処女であります」
「そっちの趣味はないよ」
別に男に飢えてはいない。
まぁコテツが可愛いのは事実だけど。
そもそもこれで商売しようとは思ってないからタダで良いよ。
「でありますか」
コテツの瞳が更に輝く。
「師匠は器量が深いのでありますね」
「あー……」
「某は感服であります」
可愛い顔で嬉しい事を言ってくる。
さてどうしたものか。
というかとりあえず手っ取り早く外に出る必要がある。
場合によっては陽動のウーニャーがドラゴンブレスを吐きかねない。
厳重注意はしているけれど零歳児に対する提案は念仏と同義だ。
「じゃ、とりあえず武の国に案内して」
「了解であります師匠」
そゆことになった。
「あれ?」
と思う。
もしかしてまた流されてるだろうか?