鬼の国30
とりあえず鬼ヶ城には着いた。
透遁の術で姿を隠しているけど。
巨大な門が有り、城があった。
「亜人にも文化は在るんだねぇ」
と感慨深い言葉を漏らすと、
「大鬼は知性を持ちますから」
とジャンヌが答える。
「で、マサムネ様」
「どうする気ですか?」
フォトンとツナデが問う。
「イナフの意見は?」
「中央突破だね」
「じゃあソレで行こう」
「正気でありますか?」
原因の根幹が口の端を引きつらせた。
「コテツの都合を優先させてるんだけど?」
「まぁそうではありますが」
鬼ヶ城を直に見て及び腰。
そんな感じらしい。
「元よりコテツには期待してないよ」
「それもどうでありましょう?」
自分を顧みて。
嘆息。
とりあえずオーラで鬼ヶ城の全容を把握する。
部隊を二つに分けた。
陽動と隠密。
陽動はフォトンとイナフとウーニャーとジャンヌ。
イナフのオーラで撹乱し敵を集めてジャンヌが叩く。
フォトンとウーニャーは抜いちゃいけない最終手段。
そんなわけで頭に乗っているウーニャーの首根っこを掴んでフォトンの頭に乗せる。
隠密は僕とツナデとフィリアとコテツ。
僕とツナデで隠密の核をなし、フィリアの暴威で決着させる。
コテツは見学でファイナルアンサー。
別にウーニャーのドラゴンブレスで一切合切を塵芥に還しても良いのだけど、それだとコテツが納得しないだろうと云うことで。
配置も決まったため作戦決行。
ジャンヌが灼熱で城門を吹っ飛ばす。
「うわぁ」
コテツがドン引きしていた。
気持ちはわからないじゃない。
がジャンヌは此処に居る人材では穏当な方だ。
フォトンとウーニャーとフィリアが規格外すぎるので。
「ギシャア!」
「キシャア!」
鬼……亜人たちがフォトンたち陽動に襲いかかる。
イナフの遁術とジャンヌの灼熱が悉くを滅ぼし尽くす。
目減りする戦力を埋めるように城門に鬼が殺到する。
城内の警戒が薄くなったところで透遁の術を用いて城に侵入する隠密グループ。
つまり僕たち。
「誰も気づかないでありますね」
コテツは困惑していた。
「そうじゃないよりは良いでしょ」
論ずるにも値しない。
さて、
「こっちだね」
城内はオーラで把握しているため、王座への侵入はあまりに簡単だった。
一際大きい体を持つ鬼も感知している。
大鬼だろう。
城門でイナフとジャンヌが大層暴れているため、結果論として戦力の希薄は拭えない。
無論、城の王である大鬼の護衛に鬼たちが屯しているけれど、
「火遁の術」
ツナデが印を結んでボソリと呟いた。
炎の幻覚。
ジャンヌの灼熱にも主観的には負けない苦痛が鬼を襲う。
「――――!」
「――――!」
大鬼以外は火遁の術の威力に耐えきれず滅んだ。
そこで透遁の術を解除。
「何者だ」
大鬼は言語文化を取り入れているらしい。
ススと僕はコテツを押しやる。
「こちらがあなた様の首を取りたいと申すので」
「鬼殺しか……」
鬼殺し?
「一対一なら勝てるとでも思ったか」
大鬼の武威がコテツを叩きのめす。
僕としては柳に風だけど当人は緊張で筋肉を硬くしていた。
「リラックス」
毒にも薬にもならない声援。
「であります」
うなずいてサラリと日本刀を抜くコテツだった。
もしかして長曽称虎徹?
何となく偽物が多い程度の認識しか持ってないけど。
「その首、もらい受けます」
コテツは剣を正眼に構えてそう言った。
「よくぞほざいた!」
大鬼が襲いかかる。
剣術の理を頼りに応戦するコテツ。
が状況的にはコテツ不利。
瞬殺……とはいかないけど圧倒的に能力値が不足している。
技術があればまだフォローできるだろうけど、それに関しても未熟の一言だ。
結果、
「まぁそうなるよね」
追い詰められた。
大鬼の膨れあがった筋肉に浅い切り傷を付けるだけで、他は必死で超膂力の鬼の豪腕を防ぐに終始する。
「大丈夫?」
茶の席のソレであるように僕は問う。
「無理であります」
正直はこの際美徳だ。
「んでは介入しますかね」
僕は薬効煙を吸って吐き、皮肉気に笑った。