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鬼の国28


 とりあえずコテツと共にすることになった。


 概ねオーラで察してはいるけどコテツの体は一定のレベルまで鍛えられている。


 ただ練度が足りない。


 本当に、


「ただ細身の筋肉がある」


 というだけ。


 腰に差した刀も型には一通り適応できるけど実戦には程遠い。


 小鬼。


 餓鬼やゴブリン程度なら問題ない。


 が、中鬼に分類されるトロールやヴァンパイアには敵わないだろう。


 客観的に考えて、だ。


「ていうか何故そんな無茶を?」


 干し肉を噛みながらそんなことを問う。


 侍なのはわかったけど勇敢と蛮勇と無謀は似ているようで少し違う。


 着ている服も和服だし、愛らしい顔も手伝って、中々の美男子っぷりだ。


 別に火中に飛び込む必要も見受けられないけど。


 そんなことを言うと、


「某が侍だと証明するためであります」


 コテツは毅然として言った。


「はあ」


 と僕。


 基本的に僕は忍だ。


 侍とは水と油。


 武士道なぞはしがらみ程度にしか思っていない。


 当然勝てない敵に立ち向かうのは柄では無く、標的は弱っているときに影から叩くが常道というモノ。


 勇敢や無謀とはとんと縁が無い。


 ある種、ヒロインたちの心境による肩身の狭さが無謀の域にはあるけど、これはまた別の問題だろう。


「某はこの通り女顔であります故」


「可愛いよ」


「斬りますよ?」


「失敬。で?」


「色々と不利なのであります」


「そなの?」


 引く手数多な気がするけど。


「それが同年代には面白くないらしく……」


「にゃる」


 納得する。


「で、男気を証明するために大鬼に挑むと?」


「であります」


「馬鹿じゃないの?」


 思わず口を突いて出た。


「むぅ」


 自覚はあるらしい。


 黒パンをもむもむと食べるコテツ。


「一般的な鬼に追い立てられて大鬼が弑することが出来るとでも?」


「むぅ」


 引き算より簡単だ。


 自分の命の問題であるため。


「それでも某は侍でありたいのです」


 なんだかなぁ。


「命を賭けることと命を捨てることは違うと思うんだけど」


 やっぱり馬鹿だろう。


「魔術師なんかにはわかりません」


 さもあろう。


「けども安い挑発に乗って勝てない敵に挑むのは侍としてどうよ? 器量が足りないんじゃないの?」


「器量と申したか」


「そ。器量」


 もむもむ。


「弱い犬に吠えられても吠え返さないのが強い犬だと思うよ?」


「むぅ」


「ていうかもうちょっと強くなってから挑んだ方が良いね。練度が足りてない」


「わかるのですか?」


「まぁ色々ありまして」


 まさかオーラで全身くまなく調べましたとは言えない。


「もしかして名のある御方で?」


「賞金首という意味ではそうだね」


「ちなみに幾らであります?」


 なんかコテツの瞳が輝きだした気がするけど……気にしないでおこう。


「金貨二十枚」


「わお」


 まぁ大金には違いない。


「強いんですか?」


「それなりにね」


 少なくとも僕の戦力はたかが知れている。


 どちらかといえば驚異的なのはヒロインたちの方だ。


 ツイとフォトンとフィリアとジャンヌを指差す。


「でありますか」


 と尊敬の目を向けた。


 愛い奴。


「お兄様も体術に関して言えば特級事項だと思われますが……」


 呆れたようにツナデ。


 うん。


 まぁね。


 そのね。


「で、では」


 とコテツ。


「大鬼退治を手伝ってくれませんか?」


 却下したい。


 正直なところ面倒事だ。


 別に情も移してないし思うところも無いのだけど、


「御願いであります師匠」


 可愛らしい顔と声で言われると何だかなぁ。


 後ろ髪を引っ張られる。


「どうしますか?」


 ジャンヌが問うてきた。


「フォローくらいはして良いんじゃない?」


 精一杯の妥協であった。


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