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魔の国07

 王子様と王女様の目覚めのキスを終えて、僕とフォトンはメイドさんに連れられてダイニングに通された。


 そしてオルトとともに朝食をとるのだった。


「今日焼けたパンに今朝作ったクリームシチューじゃ。どうじゃろう? 気に入ってもらえたかな?」


 オルトは自身の髭を撫ぜながら僕たちに問う。


「とても美味しゅうございます」


「はい。文句のつけようもありません」


 僕とフォトンは感謝する。


「ああ、それから……」


 とオルトは、


「これを」


 とそう言ってパチンと指を鳴らした。


 同時に執事が封筒をフォトンに差し出した。


 封筒はオルトヴィーンの赤い判によって閉じられていた。


「これはなんでしょう?」


 封筒を手にして首を傾げるフォトンに、


「魔の国の王……バミューダ陛下への謁見の陳情じゃよ。その封筒を出せば陛下への謁見が許されるはずじゃ」


「それは……ありがとうございます」


「なに。礼を言うのはわしの方じゃ」


 気さくにオルトは笑った。


「こうして自身の足で歩くことが出来るようになったのも無限復元たるフォトン様のおかげじゃしのう」


「……喜んでもらえて何よりです」


 それだけを言うフォトンだった。


「…………」


 僕はパンを千切って咀嚼、嚥下する。


「それから」


 とオルトは言葉を続ける。


「王都への馬車を用意させていただきました」


「馬車?」


「はい……。さすがにここから王都までは遠いです。しかしてわしの馬車ならば七日でつきます故」


「そこまでお世話にはなれませんよ……」


 フォトンがしぶる。


「何ゆえです?」


 オルトが問う。


「私とマサムネ様は光の国に狙われています」


「ふむ……」


 考えるようなオルト。


 たしかに僕とフォトンは光の国に狙われている。


 というか既に監視されている。


 オーラで確認するに一人……この屋敷を監視する人間がいる。


 それも隠れながら。


「じゃあ光の国の追っ手が来なければ問題ないのかな?」


 僕はフォトンに問う。


「それは……」


 フォトンは悩み、


「そうですけど……」


 納得する。


「じゃあ簡単な話じゃないか」


「簡単な話?」


「要するに追っ手を撒ければいいんでしょ?」


「ですけど、どうやって?」


「僕のオーラが既に捉えているよ」


「オーラ?」


 クネリと首を傾げるフォトン。


「ともあれオルト卿の話は受けようよ」


 僕は提案する。


「馬で七日ってことは歩けば一ヶ月はかかるってことでしょ?」


「それはまぁ」


「なら馬車がいいよ。山賊くらいなら僕が撃退するから」


「マサムネ殿。その心配は無用ですぞ」


 オルトが口を挟んできた。


「何故です?」


「オルトヴィーンの馬車を襲う山賊などおりませぬ。騎士団を動かせば山賊如き一日で殲滅できます故、わざわざオルトヴィーンを敵にするような頭の悪い山賊野盗のたぐいはいないかと」


「なるほどね」


 僕は頷く。


「後は光の国の監視者だけですね……」


「そもそも監視してどうするのさ? 電話も無いのにゼロタイミングの通信手段なんてこの世界に無いんでしょ?」


「闇魔術の一種にありますよ?」


「闇魔術?」


「闇魔術」


 僕の問いにフォトンはコクリと頷いた。


「ともあれ魔術で通信する手段があると?」


「そういうことですね」


「ならやることは決まったね」


 そう言って僕は食事を終わらせる。


 それから広げていたオーラに移る僕らの監視者を捉えて、両手で複雑な印を結ぶ。


 そして術名。


「刃遁の術」


 次の瞬間、光の国の監視者は肉体の内部を斬撃の幻覚によってズタズタにされて気絶したのだった。


「これで光の国の監視者は気絶したよ。今の内にオルト卿の馬車で出よう?」


「刃遁の術って……トロールを殺した……?」


「まぁ手加減はしたけどね」


 ペロッと舌を出す僕。


 そういうことで僕とフォトンは悠々とオルトの用意してくれた馬車に乗って魔の国の王都を目指すのだった。


 オーラで確認するに、監視者は気絶したまま最後まで動かなかった。


 当然だ。


 ある意味でショッキングな体験だ。


 ともあれ……僕とフォトンは魔の国の王都へと向かうのだった。


 それは同時に国際魔術学院に向かうことと同義だった。

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