鬼の国24
「ウーニャー」
僕の頭の上でウーニャーは微睡んでいた。
何と言ってもドラゴンの王。
ドラゴンの頂点。
虹色の鱗はあらゆる害性を排除する。
吐くブレスはあらゆる事象を無に還す。
ある種の無茶苦茶ではある。
だからこそ僕の頭の上で気を抜いているのだけど。
フォトンとウーニャー以外のヒロインたちは襲ってくる鬼を殺してのけた。
霧遁の術と透遁の術が通じない鬼限定ではあるけど。
最も働いているのはフィリアとジャンヌだろう。
水分。
灼熱。
相反する属性の二人だ。
別にどちらが強いかは興味が無いんだけど、
「便利だ」
と思える程度には規格外。
人に言えた話でもにゃーっちゃにゃーんだけど。
「ウーニャー」
「どしたの?」
困惑。
僕にしては珍しい。
「ドールは玩具に囲まれて寂しくないのかな?」
「あ~……」
回答不能の答えだ。
ある種の正解は別種の誤解だ。
そしてある種の誤解が別種の正解でもある。
人が怖い。
人が恐ろしい。
人が畏れ多い。
別にコミュ障はドール王に限った話でもない。
問題は、
「この世界に精神神経科の医者がいない」
ということだろう。
薬効煙でも吸わせるかな?
精神的な鎮静効果はある。
「ううむ」
悩んでいる間にもヒロインたちは鬼を殺戮していく。
怒濤の如く。
波濤の如く。
「というか……」
フィリアが暴走した。
海も無い国で大津波の具現。
波濤の怒濤。
平野に湧く鬼たちを大水流が押し流す。
鬼とて受肉した以上は酸化反応で熱を得る機構は持っている。
対する大津波は酸素を奪うという一点に置いて暴力的だろう。
トライデントの威力は今更だけど。
マッピングしながら嘆息。
別に今に始まったことでも無いけどトライデントは脅威だ。
ドラゴンの王の一角を殺しただけのことはある。
神の器。
神器。
地上を支配するポセイドンのアトリビュート。
天にゼウス。
地上にポセイドン。
地下にハデス。
これは元の世界の神話だ。
けれども異世界その物が、まぁ……なんというか。
色々特殊ではあるのだけど。
「さて、では先を行きましょう」
フィリアはルンとそう言った。
この際ツッコむのは野暮なのだろう。
「ウーニャー……」
ウーニャーとしても、
「開いた口が塞がらない」
といった心境らしい。
無理もない。
偏に僕も同意見。
さて、
「なんだかな」
鬼の対処にも慣れてきた。
この際、
「鬼がどうの」
という次元でも無いけど。
十把一絡げ。
扱いが山賊と変わりない。
いいんだけどね。
別に。
サクサク進む。
とりあえずの鬼はいない。
雨後のタケノコの如く生えてくるのはしょうがないけど、
「まぁ何しに産まれてきたんだって感じですね」
とは愛しい妹の言葉。
まっこと道理。
人を襲う鬼。
別名亜人。
何がそこまで人を否定するのか。
考えるのも面倒だけど、
「巫女が考えたのか?」
という懸念は晴れない。
剣と魔法の世界なら魔物が居ないのも嘘ではあるけども。
餓鬼。
修羅。
マミー。
ゴブリン。
トロール。
スケルトン。
ヴァンパイア。
以下それぞれ。
襲ってくる対象も千差万別。
一切の傷を負わず殲滅してのけるが、
「成敗されるが定め」
も物悲しい趣があるだろう。
ジーザス。