鬼の国22
風呂で体を清めて僕は個室に引っ込んだ。
「木を以て命ず。薬効煙」
神に祈って薬を作り出す。
「火を以て命ず。ファイヤー」
くわえた薬効煙に火を点けた。
煙を吸って吐く。
ほにゃら。
一種の精神安定剤だ。
体にも良いしオススメです。
まぁハーブを吸ってるだけだから悪いはずもない。
脱法の類でも無いしね。
そうやって薬効煙をプカプカしていると、
「あ、あう……」
そんな愛らしい声。
扉の向こう。
コンコンとノックされる。
オーラを広げて確認し、
「どうぞ」
と迎える。
確認だがドール王とウーニャーだ。
「あ、あの……」
「何かな?」
「旅のお話とか……聞かせてくださると……」
「ウーニャーに聞かなかったの?」
「ドカーンとか……ズドーンという……感じには……聞きました」
まぁウーニャーならそんな所だろう。
「とりあえず中に入って」
「ふえ……」
「取って食いやしないよ」
苦笑。
「ほ、本当ですか……?」
「嘘だったら形の国の軍事力を僕に向けていいから」
多分僕より先に軍隊の方が滅びるだろうけど。
不安を煽るのもなんなので、
「とりあえず君の意趣に反することはしないよ」
言葉で安心させる。
「ふ、ふえ」
とドール王。
僕は薬効煙を吸っていた。
フーッと煙を吐く。
ドール王は使用人に頼んでハーブティーを用意して貰っていた。
ふるまわれた茶を飲んで落ち着く。
この一点に置いて僕の薬効煙とドール王のハーブティーは同じ意味だ。
鎮静効果。
そんな話。
「形の国の後は夷の国に行ったね」
「ふえ?」
呆然。
仮にドール王の表情に題名を付けるならそういった感じ。
「い、夷の国……ですか?」
実像は知っているらしい。
犯罪者の楽園。
島流しの極地。
それが夷の国だ。
「よ、よく……無事でしたね……」
「まぁ今更犯罪者に後れを取るメンツでもないし」
煙を吸ってフーッと吐く。
「け、けれど」
おずおず。
「な、何で夷の国に……?」
「ま、観光旅行だしね」
単にそれだけ。
「見逃した国があったら不本意だし」
「そ、そういう理屈……でしょうか……?」
「海の幸は美味しかったよ?」
「ふえ……」
さすがに島流しのゴミ処理場。
島国であるが故に海産物には限度が無い。
色々と喧嘩は売ったけど、
「ま、無病息災だね」
結果論としてはその通り。
「夷の国の王とも面会したし」
「あう……」
同じ王様なのに何でこんなに違うかね?
「ウーニャー!」
尻尾ペシペシ。
「ウーニャーも役に立ったよ?」
「そ、そうなんですか?」
「まぁ暴威的な意味でね」
嘆息。
プカプカ。
とりあえずファミリーに喧嘩を売るにあたって迂回するのも面倒であったため、そして牽制や掣肘の意味も込めて、ドラゴンブレスに頼った。
十把一絡げを、
「正にその通りだろ」
と納得できるならウーニャーの能力は有用だ。
「ふわ……」
とドール王。
「まぁ自慢出来る話でも無いけどね」
肩をすくめる。
薬効煙を吸って吐いた。
それから夷の国についてポツリポツリと話して時間を潰す。
銃の具現。
その取り扱い。
実際に作り出して撃ってみせる。
結果怯えさせたのだけど。
銃弾を撃ち尽くして、ゴトッとテーブルに置く。
「だ、大丈夫……なんですか?」
「弾切れ」
「たまぎれ?」
「弓から矢が無くなったときと同一の現象」
「な、なるほど……」
そんな感じ。