鬼の国21
食事となった。
光エビのパエリア。
虹鴨の香草焼き。
神鮭のカルパッチョ。
色とりどりの料理が並ぶ。
さすがに王室の料理は手が込んでいる。
「まだ来る人来る人玩具にしてるの?」
「あう……」
「責めてないよ」
もぐもぐ。
「単なる会話のジャブ」
「はい……です」
「玩具と云うと?」
これはジャンヌ。
「ここは形の国。玩具の国って言ったでしょ?」
「言いましたね」
ついでに城に人間はドール王一人で、あとの臣下や使用人は須く玩具だ。
食事前にそに奉仕されているため実感としてはジャンヌも理解している。
「基本的な構想は渚の国に似てるかな」
「?」
「要するに行き詰まった者への救済」
「とすると……」
聡いジャンヌだった。
死んだ人間を美少女として再構築する。
似たように、死に瀕していたり人生に絶望している人間を玩具に変えて救済する。
言ってしまえばそれだけなんだけど。
「は~」
とジャンヌ。
もぐもぐ。
フォトンとは違う形での不死だ。
筋が悪いのは……どっちだろね?
「ウーニャー」
ウーニャーはドール王の頭に乗って心地よさそうだ。
当人としてもドール王は気に入っているらしい。
よかこと。
で食事を終えて僕らは茶を楽しむ。
「こ、こちらには……いつまで滞在を……?」
不安げな表情で問う。
「そんなに長くは居ないよ」
僕は答える。
「あう……」
え?
落ち込むの?
「ずっと居た方が良い?」
「その……ウーニャー様と……一緒に……」
「なぁる」
「ウーニャー!」
ウーニャーがドール王の後頭部を尻尾でペシペシ。
ウーニャーもドール王も可愛い。
「よかことよかこと」
僕は茶を楽しんだ。
「う、ウーニャー様……」
「なに?」
「い、一緒に……お風呂を……」
「いいよー」
尻尾ペシペシ。
「ありがとう……ございます」
感激しているらしい。
安いなぁ。
そんな風に思う。
別段責めているわけでもない。
軽んじても居ない。
やっぱり、
「ドール王は可愛らしい」
という再確認なのだ。
苦笑する。
「ウーニャーは懐かれてますね」
「ウーニャーちゃんの方も懐いてるわよね」
「良いことです」
全く以て。
茶を飲む。
「あの……ウーニャー様」
「なぁに?」
「い、一緒に、寝ませんか?」
「ウーニャー! 良いよ」
僕は無言で茶を飲む。
「百合百合?」
ジャンヌがそんな邪推。
「妄想が逞しすぎます」
フォトンがツッコミを入れた。
「あ、ですよね」
とりあえずの誤解は解けたらしい。
元よりコミュ障と零歳児の百合展開があるのなら色々と問題が生じる。
具体的には云わないけど。
「ま、ドール陛下はコミュ障ですから」
ツナデが論評した。
「そのようです」
ジャンヌも弁えていないわけでもないらしい。
「ウーニャー!」
尻尾ペシペシ。
「一緒にお風呂!」
「うぅ……御願いします」
困惑と憂慮。
謙遜と臆病。
こんな気質をハーレムも持ってくれれば幸いなんだけどなぁ。
無い物ねだりの僕だった。
茶を飲む。
薫り高い。
「あ、あの……」
「何?」
「ウーニャー様を……ど、独占して……いいでしょうか?」
「構わないよ」
「パパ?」
「売るつもりで言ったわけじゃ無い」
それは確かだ。