鬼の国10
「……ですか」
ツナデが不機嫌に言って銃を撃つ。
「だよね」
フィリアも不機嫌そうにトライデントを駆使する。
「…………」
ジャンヌも烈火の憤怒を炎に変えて鬼を焼き殺していた。
もはや賞金首がどうのというレベルでも無い。
僕らが通った後はぺんぺん草も残らない。
鬼さんたちもさぞ無念だろう。
そんなわけで鬼の国を北上していく僕らだった。
無論のこと鬼を蹂躙しながら。
「さて」
太陽は天頂。
「そろそろお昼だね」
「…………」
ヒロインたちは半眼だ。
とはいえ僕の意見を覆すこともしない。
空腹は敵だ。
火担当はジャンヌ。
黒パンを焼き、チーズを乗せて囓る。
うーん。
美味。
それから干し肉や干し魚を食べる。
こういうジャンクな食べ物も、
「旅をする醍醐味」
だろう。
ポリポリと骨煎餅を囓る僕だった。
「それで」
とニコリ笑うツナデ。
「お兄様はリリアと結婚するのですか?」
「しないけどなぁ」
本音だ。
弁解する必要も感じないけど。
「マサムネ様?」
とジャンヌ。
「ではどうするのです?」
「まぁ適当にあしらうさ」
「マサムネちゃん?」
「何さ?」
「お姉さん。それは不義理と思うのだけど?」
「意思疎通は難しいね」
そういう問題でも無かろうが。
「ウーニャー!」
ウーニャーが尻尾ペシペシ。
そしてドラゴンブレス。
食事していた僕らを襲おうとした鬼たちを滅却してしまう。
無茶苦茶だ。
もっとも僕らは大体似たような物だけど。
何もウーニャーだけを特筆すべきでもない。
「ではお兄様は……」
「ま、しがらみだね」
「リリアの気持ちを知った上で?」
「残酷でしてよ?」
そんな感じ。
「うーむ……」
ヒロインの総論。
気持ちは……、
「わかる」
とは言えないけど、
「想像は出来る」
と云った物だ。
「とりあえず」
ツナデが言う。
「気の多いこともお兄様の魅力ですし」
その言われ方は不本意だなぁ。
反論は一部も出来ないけど。
干し魚をもむもむ。
香ばしいアミノ酸の味がベリーマッチ。
干すことで旨みが増すと知っている歴史の人物は偉大だ。
魚然り。
椎茸然り。
「で? どうするんです?」
「まぁ叩き伏せる」
ポヤッと言って食後の茶を飲む。
茶葉さえあれば問題ない。
お湯はトライデントが作ってくれる。
それも沸騰したてのお湯ではなく、適温のお湯を。
そこに茶葉を広げれば紅茶の出来上がりだ。
「リリアが好きなの?」
イナフが問うてくる。
「まぁ好きではあるね」
それは否定できない。
「そなの!?」
イナフとしても気が気じゃない。
それはわかる。
けれどもリリアは……ねぇ?
「色々とあるんだよ」
同情という感情だ。
弱者。
それ故の理不尽。
僕はソレを十二分に知っている。
「だからかもねぇ……」
紅茶を飲みながらぼんやりと。
「?」
とヒロインたち。
「なんでもにゃ」
はぐらかす。
「マサムネ様?」
フォトンもまた心情を押し殺して笑っていた。
……怖いんですけど。
「信じて良いんですよね?」
「さてね」
別に嫌われるならソレでも良い。
憂慮の必要は僕には無いのだから。