鬼の国09
起きた。
魔の国の宿。
食事を取り、鬼の国へ。
マッピングは旅の基本だ。
鬼を鎧袖一触して夜になると魔の国の宿に戻る。
自室に転移すると、
「やほ……です……」
リリアが居た。
「不法侵入」
「一応……口が利きますので……」
えへへ。
そうリリアははにかんだ。
可愛い。
「いつも通り」
とも言う。
「で?」
「とは……?」
「何か用?」
「うん……」
「遠慮せずに言ってみなさい」
「抱いて……?」
「却下」
聞いた僕が馬鹿だった。
「結構……強くなったよ……?」
「だろうな」
そこに異論は無い。
「リリアも……」
「無理」
それは譲れない。
「何で……?」
「戦闘の勘所を覚えていない」
結局其処に行き着く。
「強力な魔術を覚えることと強くなることは乖離してるよ」
「そなの……?」
「なんです」
残酷ではあるが事実だ。
「拳銃を持った子どもが強いと言えるか?」
要するにそんな理屈。
人間が相手なら強いだろうけど、此処で相手をするのは鬼だ。
状況判断。
機転の利かせ方。
適切な戦術と上位の戦略判断。
ソレらの総合がいわゆる、
「戦闘の勘所」
である。
「むぅ……」
とリリアは不満そう。
別にフォトンが居れば問題なくはあるのだが、
「わざわざ首突っ込まんでも」
が正直な所。
「でも……」
とはリリア。
「リリアに愛に……来てくれたんだよね……?」
「否定はしない」
「えへへ……」
はにかむリリア。
可愛いなぁ。
「それで……」
と言う。
「マサムネには……少し付き合って欲しい……」
「至極ごめんなさい」
「あう……」
非難がましい目。
「そういう……意味じゃ無くて……」
「どういう意味だ?」
「少し面倒が……」
「聞く気も失せるな」
薬効煙に火を点けて煙を吸う。
「前に……結婚を迫ってきた人が……いたでしょ……?」
「居たな」
ソレは憶えている。
「あれから……」
とリリア。
「リリアは……断る理由に……マサムネを使ってる……」
「光栄だな」
「抱いて……?」
「病気が恐いし」
「処女だよ……?」
知ってる。
「だから?」
「リリアと……恋愛したい人は……マサムネに勝った人……って言ってる……」
…………。
しばし沈思黙考。
「本気で?」
「マジで……」
さいですか。
それもどうよ?
困惑するより他に無い。
「そんなわけで……」
「そんなわけで」
「勝って……?」
「…………」
戦うことが前提ですか。
そう言いたかった。
「あえて負ける」
と云えばリリアはどんな顔をするだろう。
そんなことを少し思った。